メーカーのカーシェアへの対策は
クルマが売れないのであれば、メーカーはどうするか。16年6月、ホンダは大都市圏でカーシェアリング事業を広げる方針を明らかにした。ホンダはすでに、13年11月から「ホンダカーズ スムーズレンタカー」の実験を進めてきた。会員数は約4500人にのぼる。
「駐車場が高いなどの理由から、クルマを持てない若い人たちにカーシェアの需要があるんですね」
ホンダ執行役員、日本本部長の寺谷公良氏はこう語る。
インターネットで予約し、駐車場などにあるホンダ車をICチップが搭載された免許証で開錠して借りる仕組みだ。月会費は無料で、最短12時間3980円で利用できる。
「いまはクルマを持てない方にもクルマに乗ってもらって、いずれ購入するときには、ホンダ車にしようと思ってもらうための種まきでもあるんです」(寺谷氏)
カーシェア事業には、タイムズ、オリックス、カレコなどが参入しているが、自動車メーカーがホンダのほか、トヨタ、日産が限定的ではあるが乗り出している。本来、カーシェアが進めば、クルマの販売が減ると考えられることから、両者は対立する概念だが、もはや背に腹は代えられない。
もちろん、自動車メーカーは本音では必ずしもカーシェアを歓迎しているわけではない。寺谷氏は次のように語る。
「できれば、カーシェアではなくて、所有したくなるようなクルマを追求する会社でありたいと思っています」
日本勢では、今年5月、トヨタがウーバーとの資本・業務提携を発表した。今後、両者はウーバー・ドライバー向けの車載アプリの開発、それぞれの研究活動に関する知見の共有、トヨタ・レクサス車のウーバーへのフリート販売などの協業の可能性を追求していく計画だ。トヨタ社長の豊田章男氏は、かねてから「運転する楽しさ、所有する喜び」と言い続けてきた。そのトヨタでさえ、カーシェアの流れに取り残されるわけにはいかないのだ。
海外では、ドイツの自動車メーカーが高級車のシェアリングサービスを本格的に進めている。たとえば、独ダイムラーはメルセデス・ベンツ、独フォルクスワーゲンは傘下のアウディやポルシェのカーシェアを始めた。このほか、仏プジョーシトロエングループ、独BMWなどがカーシェアを展開している。また、米ゼネラルモーターズ(GM)は配車アプリのリフトに出資している。