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桃田健史「クルマ“周辺”」

トヨタ、鳴り物入りのFCVに早くも暗雲…「希望的観測」空回りで普及進まず孤立

文=桃田健史/ジャーナリスト
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トヨタ、鳴り物入りのFCVに早くも暗雲…「希望的観測」空回りで普及進まず孤立の画像3日本で初公開された、BMWの最新型燃料電池実験車両

なぜ、世界でFCVの普及が遅いのか?

 各国がFCVの本格普及に乗り気でない理由は、大きく分けて以下の4点だ。

(1)開発コストが高いこと
(2)水素スタンドという専用のインフラ整備が必要なこと
(3)量産しても、現時点では市場性が見えないこと
(4)販売台数の達成目標を定めた法律が事実上、米ZEV法(ゼロ・エミッション・ヴィ―クル規制法)しかないこと

(1)については、トヨタとBMW、ホンダとGMなど、大手自動車メーカーがFCVを共同開発することで補おうとしている。

(2)については、欧米でコスト削減のために規制緩和が進み、日本も遅ればせながら官公庁が連携した規制緩和が徐々にだが進み始めている。

(3)については、ドイツや日本では、政府の施策のなかで将来の市場規模を数値化しているが、あくまでも「希望的観測」。現実には、トヨタが「先行者利益」と「社会に対する貢献」を念頭に、市場に切り込んでおり、それを各社が「様子見している」状況だ。

 そして、(4)については、米カリフォルニア州大気資源局(CARB)が定めるZEV法で、電気自動車(EV)またはFCVの市場導入が促進されている。だが、ZEV法をクリアするためにEVよりFCVを重要視しているのは、現状ではトヨタのみだ。

トヨタ、鳴り物入りのFCVに早くも暗雲…「希望的観測」空回りで普及進まず孤立の画像4

日本版ZEV法なしでは、そのうち「息切れ」

 日本におけるFCV普及戦略については、政府が2014年4月に閣議決定した「エネルギー基本計画」が基盤にある。そのなかで、「“水素社会”の実現に向けた取組の加速」として、FCV導入に受けたインフラの規制見直しを進め、FCV商業化を促進させるとしている。

 そして計画に沿って、15年を「水素元年」を銘打ち、トヨタ「MIRAI」を前面に押し出し、各種のシンポジウム開催や、マスコミを使った周知活動を行ってきた。

 だが、16年後半となった現在、FCV普及が「昨年に比べて、さらに進んでいる」という感触が一般消費者にはない。自動運転もFCVも「20年の東京オリンピック・パラリンピックを目指して」という、政府やトヨタの掛け声はまだ続いている。だが、FCVの社会における受容性が不透明な印象が強く、一般消費者にとって「ピンとこない」のだと思う。

 結局、FCVを日本で普及させるには、市場での競争原理に委ねるのではなく、米ZEV法の日本版を策定し、自動車メーカーに対する「強制力」を発効するのが最良策なのかもしれない。技術的には規制緩和を進めるべきだが、普及台数では規制が必要である。
(文=桃田健史/ジャーナリスト)

桃田健史/ジャーナリスト

桃田健史/ジャーナリスト

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、自動運転、EV等の車両電動化、情報通信のテレマティクス、そして高齢ドライバー問題や公共交通再編など。
ジャーナリスト 桃田健史 オフィシャルサイト

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