電通、靴でビール飲み強制…「社員過労死」文化は20年以上前から、東京五輪の発注停止すべき

電通で新人の過労自死が繰り返された背景

 ブラック企業被害対策弁護団代表を務める弁護士の佐々木亮氏は、そうした社会的風潮に対して「亡くなった方に非難の矛先を向けるのは、想像力が乏しく非常にレベルが低い」と厳しく批判する。

「3カ月連続して残業月100時間を超えた場合の精神疾患(および、それを原因とする自死)との間の因果関係は、医学的見地や経験則などから導かれた合理的なものだ。自分はもっと働いているからといって、同じことを他人ができるわけではない。

 新人の場合、仕事は遅いだろうし、それでもクライアントの無理な要望もあるだろう。中途入社や経験者であれば、自分のキャパシティを知っているから体の異変を感じたら残業を断ったり休んだりできる者もいるだろうが、新人は自分の耐性自体がわからない。

 どこかで上司が業務量を減らさないと、事件は起きる。そういう意味では、電通事件から20年以上たって高橋さんの事件が起きたのも、決して偶然ではない」(佐々木氏)

 新人の過重労働については、上司はもちろん幹部も知らないはずがない。それは、自分がたどってきた道だからだ。

 たとえば、電通の石井直社長は大学卒業後の73年4月に入社しており、営業局長や常務執行役員国際本部副本部長を経て社長に就任している。若い頃はさぞかしハードワーカーだっただろうと容易に想像できるが、結局、企業の中ではそういうことを乗り越えてきた人間が幹部や管理職になっているため、過労で「死にたい」と思う人の心の痛みは、どこまでいっても理解できないのかもしれない。

法違反や過労死の企業は社名を公表すべき

 とはいえ、現在の労働法制や社会の仕組みを、このままにしておいていいわけがない。では、どのように変えるのが有効なのだろうか。

 佐々木氏は、まず「労働時間の上限を決めればいい」と語る。これは、とてもシンプルだ。次に佐々木氏が提案するのは、「勤務間インターバル」の創設。これは、終業時刻から次の始業時刻までの一定時間、休息を取らせることを義務づけるものだ。

 たとえば、3時間残業したら翌日は出勤を3時間遅くするという具合だ。日本では、どんなに夜遅くまで残業しても、翌日は定時出社を求められる。それでは睡眠不足になりやすく、睡眠不足は体の疲れがとれないばかりか、うつ病に罹患しやすくもなる。勤務間インターバルは日本ではまだなじみがないが、ヨーロッパでは導入例がある制度だ。

 ただ、どんな制度をとり入れても、電通のように申告する労働時間でインチキをしていたら効果はまったくない。そこで、違反をした企業には強力な制裁が必要だ。佐々木氏は、「法違反をしたり、社員が過労死認定されたりした企業は、その社名を公表すべきだ」と言う。

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