
神奈川県平塚市の食肉販売会社、肉の石川が販売した冷凍メンチカツで、腸管出血性大腸菌O157による集団食中毒事件が発生した。10月17日以降、複数の医療機関から神奈川県の保健福祉事務所に届出があり、11月1日当初の患者数は17人だったが、4日現在、30人に増えている。患者から検出されたO157の遺伝子パターンが、冷凍メンチから検出されたものと一致したので、神奈川県は「冷凍メンチに起因する食中毒と決定した」と公表している。
食の安全に関する事件では、企業姿勢が問題にされることが多いが、肉の石川が11月1日に公表した「ご関係者各位」という謝罪文には首をかしげたくなる。
『一冊で分かる食品表示』(垣田達哉/商業界)
しかも、厚生省(現厚生労働省)告示第370号(1959年)の「食品別の規格基準」では「加熱後摂取冷凍食品であって、凍結させる直前に加熱されたもの以外のものは、(中略)E.Coli【編注:大腸菌】が陰性でなければならない」と規定されている。E.Coliが陰性(不検出)でなければいけないという基準がある。大腸菌が含まれた食品は、規格基準を満たしていないということだ。
つまり、食品衛生法も食品別の規格基準も「調理方法を表示していれば、大腸菌が含まれていても問題ない」とは言っていない。いったい、どんな根拠があって「食品衛生法上違反でも全く問題がない商品である」と断定したのだろうか。
そもそも厚生労働省は10月31日、この冷凍メンチカツの自主回収に関して「厚生労働省や都道府県等が公表した食品衛生法違反食品等の回収情報」を掲載・記者発表している。「違反食品等」とは、「違反またはその疑いのある食品等」という意味である。まったく違反していなければ掲載されないはずだ。
次に疑問なことは「十分な加熱がされていない状態(弊社規定の調理時間未満)で食べられたお客様より、健康被害の報告がありました」とあるが、被害者側が「調理時間未満で食べた」と断定できる調査を、本当に行ったのだろうか。