渡辺雄二「食にまつわるエトセトラ」

「糖質0」「プリン体0」の発泡酒や第三のビールは危険!オススメはこの70%オフ商品だ!

ディスカウントストアに並ぶ缶ビール(「Wikipedia」より/BetacommandBot)

 年末が近づいてきて、お酒を飲む機会が増えている人も多いでしょう。最近、「糖質ゼロ」「プリン体ゼロ」「人工甘味料ゼロ」などをうたう発泡酒第三のビールが増えています。それらは、普通の発泡酒や第三のビールと、いったいどう違うのでしょうか。また、どの製品が体にとって一番いいのでしょうか。

 これら、いわば健康を意識してつくられた発泡酒や第三のビールを分類すると、おおよそ次のようになります。

・糖質ゼロ
・糖質ゼロ、プリン体ゼロ
・糖質ゼロ、プリン体ゼロ、人工甘味料ゼロ
・糖質70%オフあるいは75%オフ

 では、これらの中身を検証してみしょう。

 まず、「糖質ゼロ」の製品。糖質とは、食物繊維を除いた炭水化物のことです。食物繊維は消化・吸収されないので、エネルギーとはなりませんが、糖質は消化・吸収されてぶどう糖や果糖となり、エネルギーに変換されます。また一部はグリコーゲンとして蓄積されます。ただし、過剰に摂取すると、ぶどう糖が十分消費されずに血液中にとどまって高血糖を引き起こします。また、ぶどう糖や果糖が脂肪に変換されて内臓脂肪として蓄積され、肥満の原因となります。

 そのため、「糖質は体によくない」という一般認識が広がりました。そこで、「糖質ゼロ」の発泡酒や第三のビールが登場したのです。しかし、それらには合成甘味料のアセスルファムカリウム(K)が添加されたものが多いのです。アセスルファムKは、砂糖の約200倍の甘味がありますが、自然界に存在しない化学合成物質で、体内で分解されることなく血液に乗って全身をめぐります。

 犬にアセスルファムKを0.3%および3%含むえさを2年間食べさせた実験では、0.3%群でリンパ球の減少がみられ、3%群ではGPT(肝臓障害の際に増える酵素)の増加とリンパ球の減少が認められました。つまり、肝臓に対するダメージや免疫力を低下させることが心配されるのです。また、妊娠したネズミを使った実験では、胎児に移行することがわかっています。したがって、アセスルファムKが含まれる製品はできるだけ避けたほうがよいと考えられます。

プリン体を含む食べ物で痛風にはならない

 次に「糖質ゼロ、プリン体ゼロ」の製品。「糖質ゼロ」の製品と同様に、アセスルファムKが添加されていますので、おススメできません。また、プリン体は痛風の原因になるといわれ、糖質と同様に悪者扱いされていますが、かなり誤解があります。

 プリン体とは、「プリン骨格」という独特の化学構造を持つ物質の総称ですが、実は細胞の遺伝子(DNA)を構成する物質なのです。遺伝子は、リン酸と糖から成る鎖状のものに4つの塩基、すなわちアデニン、チミン、グアニン、シトシンが結合してつくられていますが、アデニンとグアニンの主成分がプリン体なのです。ですから、もしプリン体が存在しなかったら2つの塩基はつくられず、遺伝子は構成されないことになります。

 では、なぜそんな重要なプリン体が悪者になってしまったのでしょうか。プリン体は、食べ物とともに体内に取り込まれるほか、アミノ酸の一種のグルタミンやグリシンなどから体内で合成されています。一方、新陳代謝によって、古いアデニンやグアニンが分解することでもできています。プリン体は肝臓で代謝されて、尿酸となって体外に排出されます。ちなみに、体内のプリン体の7割は体の中で生成されています。

 こうした一連の代謝が行われ、プリン体が尿酸に変化し、それがスムーズに排泄されていれば問題ないのですが、体内で尿酸が多くなりすぎると、血液中に尿酸がたまって高尿酸血症を起こします。さらに、この状態が続くと尿酸が結晶化した尿酸塩が関節に沈着していき、急性関節炎を発症します。これがいわゆる痛風で、劇的な痛みを伴います。

 体内でプリン体が多くなると、当然ながら尿酸も増えることになります。そのため、プリン体が痛風の原因といわれるようになり、悪者にされてしまったのです。

 しかし、プリン体を含む食品を食べたぐらいでは、痛風は起こりません。痛風は、プリン体を多く含む食品を食べ続け、さらにアルコールを摂取し続けることによって起こります。アルコールは体内の尿酸をできやすくし、尿酸値を高めてしまうからです。

 ビールは、アルコールの中ではプリン体を多く含んでいます。そのため、それが問題視されるようになり、「プリン体ゼロ」の製品が出回るようになったのですが、ビールに含まれるプリン体は実は非常に少ないのです。ビール100ミリリットルあたりに含まれるプリン体は3.3~6.9ミリグラム。これに対して、白米に含まれるプリン体は100グラムあたり25.9ミリグラム、醤油は同45.2ミリグラム、鶏レバーは同312.2ミリグラム、カツオは同211.4ミリグラム、マグロは同157.4ミリグラムです。

 したがって、ビールに含まれるプリン体をそれほど気にする必要はないのです。ビールを飲んでも、プリン体を多く含む食品を食べすぎないようにすれば、体内に尿酸が過剰に蓄積されることはなく、痛風になることはないのです。

カラメル色素を含む飲料は避けるべし

 次に「糖質ゼロ、プリン体ゼロ、人工甘味料ゼロ」の製品。「人工甘味料ゼロ」ということで、アセスルファムKなどの合成甘味料は添加されていません。糖類(ぶどう糖、果糖、砂糖などで、糖質の一種)は入っていますが、100ミリリットルあたり0.5グラム未満と微量です。ちなみに、食品表示基準では、100ミリリットルあたり糖質が0.5グラム未満であれば、「糖質ゼロ」と表示できることになっています。

 ただし、カラメル色素が添加された製品が多いのです。色を濃くするために使われているようです。カラメル色素はⅠ~Ⅳまで4種類ありますが、カラメルⅢとⅣには、発がん性のある4-メチルイミダゾールという物質が含まれています。しかし、「カラメル色素」としか表示されないため、ⅠからⅣのどれが使われているかはわかりません。ですから、消費者としては、原材料に「カラメル色素」と表示された製品はなるべく避けるようにしたほうがよいでしょう。

 最後に「糖質70%オフあるいは75%オフ」の製品。これは比較的古くから販売されているものです。代表格は「淡麗グリーンラベル<生>糖質70%オフ」(麒麟麦酒)で、原材料は「麦芽、ホップ、大麦、コーン、糖類」です。合成甘味料のアセスルファムKもカラメル色素も使われていません。糖質は70%オフということで、1缶(350ミリリットル)あたり1.75~3.85グラムで、エネルギーは98キロカロリーです。ちなみに、「淡麗極上<生>」は、同11.2グラム、157.5キロカロリーですから、それに比べるとかなり少ないことがわかります。

 また、もうひとつの代表格である「金麦糖質75%オフ」(サントリービール)の原材料は、「発泡酒(麦芽、ホップ、糖類、食物繊維)、スピリッツ、炭酸ガス含有」で、これもアセスルファムKやカラメル色素は使われていません。1缶(350ミリリットル)あたりの糖質は1.75~2.8グラム、エネルギーは115.5キロカロリーです。

淡麗グリーラベル<生>糖質70%オフ」も「金麦糖質75%オフ」も、プリン体は含まれていますが、前述のように含まれるプリン体は少ないので、それほど心配する必要はありません。したがって、糖質が少なく、カロリーも低めなこの2製品がおススメといえます。筆者もこの2製品を何度も飲んだことがありますが、味もなかなかよく、飲みごたえもあるので気に入っています。糖質やカロリーが心配という人は、一度味わってみてはいかがでしょうか。
(文=渡辺雄二/科学ジャーナリスト)

渡辺雄二/科学ジャーナリスト

1954年9月生まれ。栃木県宇都宮市出身。千葉大学工学部合成化学科卒。消費生活問題紙の記者を経て、82年からフリーの科学ジャーナリストとなる。全国各地で講演も行っている

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