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小林敬幸「ビジネスのホント」

トランプ支持層への危険な誤解…「田舎の人たち」だが、決して「愚か」ではない

文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者
トランプ支持層への危険な誤解…「田舎の人たち」だが、決して「愚か」ではないの画像1トランプ氏のマスクを製造する埼玉の業者(写真:AP/アフロ)

 トランプ米大統領の登場には、できるだけ正しく身構えたいものだ。そのためには、まず、トランプ氏に投票した支持層をよく理解したい。次に、ビジネス界出身というイメージに過度に影響を受けないように気をつけたい。

アメリカの田舎のトランプ支持層を理解

トランプ支持層への危険な誤解…「田舎の人たち」だが、決して「愚か」ではないの画像2『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』(小林敬幸/KADOKAWA/角川書店

 トランプ氏本人に対する個人的趣味嗜好よりも、投票者の47%のトランプ支持者を正しく理解することのほうが重要だ。なんといっても、アメリカを動かしているのは、アメリカの世論だからだ。そしてほとんどの日本人は、そのアメリカの世論の動きをよく理解していなかったことが、この選挙結果でよくわかった。

 トランプへの投票が多かった選挙区をみてみよう。下図は、州ごとに共和党が勝った「レッド州」と、民主党の勝った「ブルー州」とに分けた、よく目にする図とは少し違う。州よりもっと狭い郡(カウンティ―)ごとに分け、共和党(レッド)と民主党(ブルー)のどちらが得票数が多かったかで塗り分けている。

トランプ支持層への危険な誤解…「田舎の人たち」だが、決して「愚か」ではないの画像3

 この図をみると歴然としているように、田舎でトランプ、都市でクリントンが得票している。この傾向は、その州全体でトランプが勝った「レッド州」か、クリントンが勝った「ブルー州」かにかかわらずみてとれる。つまり、トランプ支持層は「田舎の人たち」なのである。

 今回の大統領選前後に日本のメディアに登場する評論家で、赤く色づけされたトランプ支持の田舎の郡に住んだことのある人は、どれだけいるのだろうか。もう少し基準を緩めて、アメリカ中西部・南部の共和党支持基盤(レッド州)の都会に住んだことのある人も少ないだろう。まさにトランプが攻撃しているシリコンバレー、ニューヨーク、ワシントンのアメリカ人しか知らない人がほとんどだ。だから、数人の例外を除いて評論家の語るトランプ支持層の像は、いかにもアメリカのエリート新聞の受け売りで、自分の実体験の裏付けのない薄っぺらなものに聞こえた。

 私は1990年代初めにテキサスの田舎に9カ月住んでいたことがある。ビルの4階に上がると、地平線がみえるような田舎だ。キツツキのような古びたオイルリグが、荒野に点々と地平線の彼方まで続く。道路サイドのハンバーガーショップでコーラを飲んでいると、子供が珍しい東洋人の私の顔を覗き込みに来る。

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

1962年生まれ。1986年東京大学法学部卒業後、2016年までの30年間、三井物産株式会社に勤務。「お台場の観覧車」、ライフネット生命保険の起業、リクルート社との資本業務提携などを担当。著書に『ビジネスをつくる仕事』(講談社現代新書)、『自分の頭で判断する技術』(角川書店)など。現在、日系大手メーカーに勤務しIoT領域における新規事業を担当。

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