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小林敬幸「ビジネスのホント」

トランプ支持層への危険な誤解…「田舎の人たち」だが、決して「愚か」ではない

文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者

 私は、地元の言葉もよく理解できず、溶け込むことはできなかったし、今回のトランプ支持層にも直接会ってみたわけではない。しかし、トランプ支持の人たち(念のために繰り返すが、トランプ本人ではない)、即ちアメリカの田舎の人たちについて、少なくとも次のようなことだけは言えるように思う。

・メディアで批判的に報道されているほど、「愚か」ではない。アメリカの投票者の47%が「愚か」というのはあり得ない。
・トランプのメディアでのイメージと正反対で、「いい人」たちである。
・トランプの説明と同様に、「シンプルに判断」する。

 日本人でトランプ支持の郡に住んだことがあるのは、自動車などの工場の進出に伴い駐在したことのある技術者などの会社員だろう。ぜひ、こういう人たちが現地の雰囲気を伝えてくれたらと思う。

 いずれにしても、トランプに投票した人を非難してもなんのメリットもない。そういう人を理解することが、最初にするべきことだろう。

ビジネスマンとしてのイメージに引きずられない

 
 トランプ報道で気になるのは、メディアの論客の多くが「トランプさんはビジネスマンだから、大統領に就任すれば選挙戦で言っていたことを変えるに違いない」と説明していることだ。それはトランプがメディアの人だからで、ビジネスマンゆえではないだろう。ビジネスマンがバカにされているようで、どうもひっかかる。

 ビジネスパーソンは信用が第一、約束を違えてはいけない。ビジネスの交渉でも、一貫性があって軸がぶれないと「凄み」が出て強い。同じ条件下なのにころころと言うことを変える輩は、相手にされない。よいビジネスパーソンが素早く対応を変えるのは、状況が変わった時だ。

「大統領になったら」という条件が同じなのに、「これをする」という行動が、以前に約束していたことと違うというのでは、よいビジネスパーソンのやり方とはいえない。確かに、トランプ氏は言っていた通りには実行しないとは、私も予想する。それは、一流のメディアの利用者であり、もはや政治家になったという証であって、決してビジネスパーソンゆえではない。

 その意味で、トランプ氏の行動をやみくもに「ビジネスパーソンだから」と根拠づけようとすると、間違いをおかすだろう。
(文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者)

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

1962年生まれ。1986年東京大学法学部卒業後、2016年までの30年間、三井物産株式会社に勤務。「お台場の観覧車」、ライフネット生命保険の起業、リクルート社との資本業務提携などを担当。著書に『ビジネスをつくる仕事』(講談社現代新書)、『自分の頭で判断する技術』(角川書店)など。現在、日系大手メーカーに勤務しIoT領域における新規事業を担当。

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