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ヨドバシ通販サイト、乾電池1個でも「2時間半で無料配送」開始…実質は10時間半?

文=伊藤歩/金融ジャーナリスト
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ヨドバシ通販サイト、乾電池1個でも「2時間半で無料配送」開始…実質は10時間半?の画像1ヨドバシカメラの店舗(「Wikipedia」より/Machiro)

 ヨドバシカメラのインターネット通販サイトヨドバシ・ドット・コム「ヨドバシエクストリーム」で、購入品を最短2時間半で無料配送するサービスが開始されてから、ほぼ2カ月が経過した。同サイトで扱っている約456万点のうち大型家電などを除く43万点が対象で、対象地域は東京23区全域と武蔵野市、三鷹市、調布市、狛江市の一部。乾電池1個から即日無料配達してくれる。1分単位での配達予定時刻もメールで知らせるため、不在で受け取れないリスクは大幅に軽減される。大手の宅配便の時間指定が2~3時間刻みであることからすると、かなりのアドバンテージだ。配達時に不在の場合は、即時にメールで知らせてくれる。帰宅時に不在伝票が投函されていて、そこから再配達の日時を指定するのと比べると、これもアドバンテージは大きい。

 このサービスのために、ヨドバシカメラは都内に在庫保管用の物流センターを3カ所、小型の配送拠点を10カ所新設し、約300台の車両も用意、システム増強も含めて30億円を投じたという。約300人の配達要員もすべて自社の社員で、宅配など外部の業者は使わない。

 自社配送にこだわるのは、「受け渡しまで自社で責任を持つことで、顧客の要望や反応を直接把握し、サービス改善に生かすことができるから」(ヨドバシ広報部)。乾電池1個から無料配送し、金額の縛りはなし。配送時間は午前9時から21時までだが、中野区や杉並区では24時間対応だという。

組み合わせで可能になる「2時間半」

 実際に同サイトで会員登録をしてログインすると、画面の右上に「今すぐのご注文で●日の●時までにお届け」の表示が出る。筆者の登録住所は東京都・中央区だが、3回購入してすべて2時間半以内に購入品は配達されなかった。

 1回目は21時に注文して配達予定時刻は「翌日の14時」、所要時間は17時間。2回目は午前11時に注文して配達は「当日18時」で、所要時間は7時間。3回目は13時半に注文して「明日12時」で、所要時間は22時間半。どういう条件が揃うと2時間半になるのかをヨドバシに聞いてみたところ、「在庫×場所×注文する時間帯で決まる」という。
 
 まず注文した商品が配送拠点に在庫があればそれを配送するが、なければ倉庫から取り寄せる時間が上乗せされる。配送拠点からの距離も関係する。さらに、注文する時間帯でも差が出るらしい。配送拠点に在庫が補充される時間帯の直後だと、配送拠点に在庫がある確率が上がる。また、24時間配送の対象ではない地域だと、21時までの配送が無理ならば、21時から翌朝9時までの12時間がプラスされてしまう。

 筆者が試した3回の所要時間に当てはめてみると、1回目は実質5時間、2回目は7時間、3回目は10時間半。ちなみに、倉庫や配送拠点の場所は非公表だが、比較的時間が短いのは、江東区、葛飾区で、時間帯は13時、15時、17時だという。

2年間の実験で勝算ありと判断

 それにしてもこのサービスは、ヨドバシに勝算はあるのだろうか。配送無料はアマゾンのプライムナウというサービスでも導入しているが、プライム会員限定で、会員になるには3900円の年会費が必要。会員登録も配送料も無料のヨドバシのアドバンテージは大きい。

 配送時間を1分単位で知らせるサービスも利便性が高い。配送予定時刻のメールが入るのは注文時からではなく、配送開始時点からとはいえ、配送を家で待つ時間を短縮できることは間違いない。配送する側にとっては、配送時の顧客の不在は配送効率改善を阻む最大の壁なので、配送予定時刻のメール送信は、配送する側の効率アップにも寄与する。また、ポストに入る小型商品は購入者が不在でも投函できる。

 とはいえ、電池1個から無料配達していて、30億円の投資が回収できるのか。ヨドバシは「2年間の実験で勝算はあると判断した」という。実験は6時間配送で実施されており、「電池1個から無料配送」を謳っても、実際に電池1個しか注文しない人はほとんどおらず、平均的な1回の注文金額は「そこそこまとまった金額」だという。

 業態は異なるが、小さな町中の酒類問屋から年商1000億円超の大企業に成長したカクヤスが大きく飛躍するきっかけになったのが、缶ビール1本からの無料配送だった。東京23区内を対象に、注文から2時間以内の無料配送を実現するため店舗数を6倍に増やし、一般家庭のみならず小規模な飲食店も取り込み、のちに配送時間を1時間に短縮した。カクヤスも自社配送にこだわり、顧客の反応や要望を直接吸い上げている。

 ヨドバシは非上場会社なので、決算情報の開示義務はない。現状では売上高と経常利益のみを開示しているが、配送時間の短縮競争は注目のテーマだけに、1年後にはその成果を数字で示してくれることを期待したい。
(文=伊藤歩/金融ジャーナリスト)

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