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片山修「ずだぶくろ経営論」

自動運転車、警察庁が「安全ではない」宣言…制度も人も現状では受け入れ困難か

文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家
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 また、日本には自動車の対人事故の場合、自賠法によって、被害者救済が図られるという他国にはない特徴がある。運行供用者に対して、事実上の無過失責任主義を取ることにより、手厚い被害者保護が図られるのだ。

 したがって、「レベル3」までは被害者の過失の有無にほぼ関係なく運転者に責任を負わせられる。ちなみに、対物事故の場合は、民法による過失責任が適用され、ドライバーに故意または過失がない場合は、ドライバーに損害賠償責任は発生しない。

 ただし、グレーゾーンもある。たとえば、自動運転システムが鳴らしたアラームに、運転者がすぐに対応できずに事故が起きた場合だ。事故は人間の責任なのか、システムの責任なのか判断が分かれるだろう。ある大手損害保険会社の役員は、次のような見解を示す。

「その意味で、『レベル3』を通り越して、いきなり『レベル4』にいくのではないかという見方もできますね」

 実際、「レベル4」では、そもそもドライバーという概念がなくなることから、従来の自動車とは別のものととらえるべきだろう。自動車の安全基準、利用者の義務、免許制度、刑事責任のあり方など、自動車に関する法令などを抜本的に見直したうえでの議論が必須になる。別の損害保険会社の社員は、次のように危惧する。

「安全運転支援システムや自動走行システムに不具合があった場合、自動車メーカーの責任なのか、部品メーカーの責任なのか、ドライバーの誤操作なのかという問題が出てくるでしょうね。また、雪が降って白線が見えにくくなっていたなど、道路交通インフラの整備不良に起因して事故が発生した場合、インフラメーカーが責任を負うのか、国が責任を負うのかという問題になる可能性もあると考えられます」

複雑化する事故原因

 つまり、自動運転車が起こした事故原因を特定するのは簡単ではない。膨大な調査には時間もお金もかかるだろう。結果、被害者に迅速な保険金支払いができなくなるなどの弊害が予想される。
 
 また、従来の交通事故は、人間対人間で過失割合を決定できたが、これからは自動運転車同士の事故など、人間とシステムの多岐にわたる責任関係を想定する必要が出てくるのだ。事故責任でもめないためには、自動運転車にドライブレコーダーの装着を義務付けるなどして、過失割合に応じて損害を分担する仕組みが求められるだろう。場合によっては、自動車や運転システムの製造者、部品のサプライヤーなどが負担する責任が、今より重くなる可能性も出てくる。いわゆる製造者責任である。

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

愛知県名古屋市生まれ。2001年~2011年までの10年間、学習院女子大学客員教授を務める。企業経営論の日本の第一人者。主要月刊誌『中央公論』『文藝春秋』『Voice』『潮』などのほか、『週刊エコノミスト』『SAPIO』『THE21』など多数の雑誌に論文を執筆。経済、経営、政治など幅広いテーマを手掛ける。『ソニーの法則』(小学館文庫)20万部、『トヨタの方式』(同)は8万部のベストセラー。著書は60冊を超える。中国語、韓国語への翻訳書多数。

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