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片山修「ずだぶくろ経営論」

自動運転車、警察庁が「安全ではない」宣言…制度も人も現状では受け入れ困難か

文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家
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 このほか、自動運転車はインターネットにつながったITの塊であることから、サイバー攻撃による事故を考慮しなければいけない。15年7月、ジープ「チェロキー」へのサイバー攻撃が可能であるという実験結果を受け、米FCA社は140万台の車両を米国でリコールした。サイバー攻撃により自動車がコントロール不能になれば、とてつもない事故が発生する恐れがある。その場合の損害賠償責任についても、十分な検討が求められる。

 メーカーが恐れているのは、自動運転にまつわる事故だ。かりにも、テスラが引き起こしたような死亡事故が再び起きれば、メーカーが積み上げてきた安全技術の信頼は大きく損なわれる。ひいては、自動運転の社会的受容にも影響が出てくるだろう。

 警察庁はこの7月、「現在実用化されている『自動運転』機能は、完全な自動運転ではありません!!」とする告知を出した。運転者は、機能を過信せず、責任をもって安全運転を行う必要があるというメッセージだ。

 ちなみに、ホンダは開発中の「自動運転」技術を、あくまでも「安全運転支援システム」といっている。

 東京海上日動火災保険は2017年4月から、自動運転中の事故を自動車保険の補償対象に加える。

 自動運転が、大きな可能性を秘めているのは紛れもない事実だ。イノベーションを閉ざしてはならない。ただし、自動運転のメリットを享受するためには、自動運転をめぐる社会的な影響、生命にかかわる重大性を踏まえたうえで、さまざまな仕組みを整備していかなければならないのも、また、いうまでもないことだ。とりわけ、法的責任をどうするか。また、自動運転車をめぐる規制のあり方をどうするか。これらの問題は、自動運転が今後、どのように進展するかを決める重要な指針になるだろう。
(文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家)

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

愛知県名古屋市生まれ。2001年~2011年までの10年間、学習院女子大学客員教授を務める。企業経営論の日本の第一人者。主要月刊誌『中央公論』『文藝春秋』『Voice』『潮』などのほか、『週刊エコノミスト』『SAPIO』『THE21』など多数の雑誌に論文を執筆。経済、経営、政治など幅広いテーマを手掛ける。『ソニーの法則』(小学館文庫)20万部、『トヨタの方式』(同)は8万部のベストセラー。著書は60冊を超える。中国語、韓国語への翻訳書多数。

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