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水野誠「マーケティングの進化学」

「隠れトランプ支持」説へ反論…有力メディアが予測を外した知られざる理由

文=水野誠/明治大学商学部教授

 このなかで、 (2)の隠れトランプ支持者に関する仮説について検討することにします。なぜなら、今回この説明が特に話題になったと思われるからです。調査対象者が意図的に嘘をつくことが一定の規模で起きたとしたら、世論調査だけでなく、さまざまな質問紙調査やインタビュー調査の信頼が失われることになります。

「隠れトランプ支持者」は存在したか

 不穏当な発言を繰り返すトランプ氏に投票する(した)と調査員に答えるのは恥ずかしい、そこで嘘を答える、その結果として調査に基づく予測が実際と乖離する――。これは、いかにもありそうなストーリーです。しかし、選挙やプロスポーツの予測の達人と知られるネイト・シルバー氏が編集長を務める「538」というウェブサイトでは、この仮説に対するいくつもの反証が提示されています。

・トランプ支持を隠したくなるのは、回答者に「社会的に望ましい」回答を行うバイアスがあるためと考えられる。だとすると、トランプ氏がクリントン氏をリードしている州ほど、トランプ支持を隠す必要がないので、世論調査の予測は投票結果に近づくはずだ。ところが、そうした州ではかえってトランプの得票が調査に基づく予測を上回った。

・トランプほど過激ではない共和党の上院議員候補についても、民主党をリードしている州ほど世論調査の予測を上回る票を得ている。大統領候補への投票と同様、社会的望ましさバイアスで予測が外れたとは考えにくい。

・事前の調査から、高学歴者(大卒以上)ほどトランプ支持を(わずかだが)隠す傾向があることがわかっている。しかし、トランプの実際の得票数が世論調査による予測を上回ったのは、高学歴者が比較的少ない州であった。

・トランプ陣営が行った調査では、電話による質問に対してトランプ支持を隠す傾向が見られたが、投票日の直前にはほとんどなくなった。つまり、その時点でトランプ支持であることを隠さなくなっていた。

 以上を踏まえると、予測が失敗したのはいわゆる隠れトランプ支持者のためではなく、別の要因によると考えたほうがよさそうです。

水野誠/明治大学商学部教授

水野誠/明治大学商学部教授

明治大学商学部教授
、博士(経済学)東京大学。1980年筑波大学第一学群社会学類卒業。1985年筑波大学大学院経営・政策科学研究科修士課程修了。2000年東京大学大学院経済学研究科企業・市場専攻博士課程単位取得満期退学。株式会社博報堂(マーケティング局・研究開発局、1980~2003年)における勤務、筑波大学社会工学系専任講師、同大学大学院システム情報工学研究科専任講師、准教授(2003~2008年)、明治大学商学部准教授(2008~2014年)を経て現職

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