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新見正則「医療の極論、常識、非常識」

うつ病の薬は無意味で危険?いや、必要?米国では販売推進の医薬品企業に罰金命令

文=新見正則/医学博士、医師
うつ病の薬は無意味で危険?いや、必要?米国では販売推進の医薬品企業に罰金命令の画像1「Thinkstock」より

 今回はうつ病もどきのお話です。もどきとは、簡単な確定診断がないので、実はうつ病でない人も含まれるという意味です。高血圧は血圧計で測定すれば誰でも自分の血圧がわかります。糖尿病はヘモグロビンA1Cに注目すれば、誰もが糖尿病であることを認識できます。そして治療の経過も数字で示されるのでわかりやすいのです。

 一方、うつ病の診断でよく使われるのは、以下の項目の内、5つ以上が同じ2週間に存在しているかという質問です。

・ほとんど1日中、ほとんど毎日、抑うつ気分
・ほとんど1日中、ほとんど毎日、興味や喜びの著しい減退
・ほとんど毎日、食欲の減退または増加
・ほとんど毎日、不眠または睡眠過多
・ほとんど毎日、焦燥感
・ほとんど毎日、易疲労性または気力の減退
・ほとんど毎日、無価値観
・ほとんど毎日、思考力や集中力の減退
・反復的な自殺念慮、自殺企図

 どれも血圧やヘモグロビンA1Cのように客観的に数値化できません。患者さんの主観も入るでしょうし、医師の先入観も存在するかもしれません。本当のうつ病ではないのに該当すると言うこともできるでしょうし、医者が該当すると判断すればうつ病になってしまいます。

割れる意見

“非常識君”の意見です。

「あくまで仮定の話ですが、もし病気になりたい患者がいて、患者が欲しい医者がいれば、うつ病患者はどんどん生産される。大多数の専門家がうつ病には該当しないと言っても、ひとりの医師がうつ病だと診断すれば、その診断が翻ることはまずありません」

 これに対し、“極論君“はこう言います。

「でも患者さんは困っているのだから、どんどん抗うつ薬を処方してもらって、休息するべきではないでしょうか」

 非常識君は反論します。

「抗うつ薬は、実はほとんど効果がないという意見もあります。最近流行のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)も同様です。本当に脳内でセロトニンが不足しているのであれば、SSRIを飲んですぐにでも症状は改善しそうですが、何週間も必要です。休息を取ることとの差がどれだけあるのでしょう」

 極論君の意見です。

「ストレス社会となって、本当にうつ病で困っている人は増加しています。もちろんうつ病にまで至らなくても、うつ病の手前の段階で苦労している人もいます。SSRIはうつ病以外に、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害にも保険診療での投与が認められています。そんな症状にも効くのですから、心の病にいろいろな薬がどんどん投与されることが患者さんのためにも有益だと思います」

新見正則/医学博士・医師

新見正則/医学博士・医師

1959年生まれ
1985年 慶應義塾大学医学部卒業
1985年~ 慶應義塾大学医学部外科
1993~1998年 英国オックスフォード大学医学部博士課程
1998年~ 帝京大学医学部外科に勤務

 幅広い知識を持つ臨床医で、移植免疫学のサイエンティスト、そしてセカンドオピニオンのパイオニアで、モダン・カンポウやメディカルヨガの啓蒙者、趣味はトライアスロン。著書多数。なお、診察希望者は帝京大学医学部付属病院または公益財団法人愛世会愛誠病院で受診してください。大学病院は紹介状が必要です。

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