発毛剤の大量使用で心不全に?

「2000年代はじめには、発毛剤の使用者が急性心不全などの心疾患で死亡したケースが過去に3件あったと発表されました」と話すのは、医療ジャーナリストのA氏だ。

 その発毛剤に含まれる『ミノキシジル』という成分は、もともと高血圧治療の血管拡張薬として使われていたもので、のちに発毛剤に転用された経緯があるという。上記の3件の事例では、このミノキシジルの副作用の疑いがあると報じられている。

「厚労省は、『薬と事故の因果関係は不明』と結論づけましたが、育毛を望むあまり過剰に摂取した疑いが強いです。実際に、これ以降、その発毛剤は購入時の注意喚起が強化され、09年に施行された改正薬事法では、第1類医薬品に指定されました。販売元の企業のホームページには、騒動の経緯をまとめた文章が掲載されており、現在も閲覧できます」(A氏)

「第1類医薬品」とは、「政府広報オンライン」によれば、「副作用などにより、日常生活に支障をきたす程度の健康障害を生じるおそれがあり、特に注意が必要なもの」と定義されたものだ。

重篤な副作用の場合は医療費の補償制度も

 医師の処方せんがいらない市販薬は、手軽に購入できる一方、間違った飲み方をすれば毒にもなり得る。副作用で苦しまないためには、まずはその薬について知ることが大切だ。

「市販薬の間違った飲み方は危険」と警鐘を鳴らす小谷氏は、「薬の正しい用法・用量や副作用など、重要な情報は付属の説明書に記載されています。薬を飲む際には、説明書をよく読み、最後まで捨てずに取っておくべき」と語る。

「説明書には、万が一の際に相談できる『医薬品副作用被害救済制度』の連絡先が記載されています。これは、薬による重篤な副作用が認められたときに、医療費などの補償をしてくれる公的な制度です。しかし、補償の対象となるのは薬の『適切な使用』をした場合のみです。用法・用量を守っていなければ対象外になってしまいます」(小谷氏)

 また、市販薬について不安な点があれば、購入時に薬剤師や登録販売者に質問する方法もある。ほかの薬との飲み合わせや既往歴など、自己判断が難しい内容の相談にも乗ってくれるという。

「お客様からの相談に、薬剤師は専門家としてしっかり答えます。店頭で気軽に聞いてみてください。もし、親身になってくれないような場合は、薬剤師失格でしょう」(同)

 とはいえ、薬の服用は最終的には自己責任。自分の健康をいたずらに危険にさらさないためにも、正しい知識と良識を持った使用を心がけたいものだ。
(文=森江利子/清談社)

『その薬があなたを殺す! 薬剤師が教える“知らないと毒になる”薬の話』 風邪薬、頭痛薬、湿布などの薬ですが、使い方ひとつで、効果が減るどころか、死にいたる可能性すらあります。しかも、薬の副作用の報告例で最も多いのは、「風邪薬」(総合感冒薬)なのです。「クスリ」とは、ある意味リスク。薬剤師だからこそ知っている身近な薬の危険な使い方・効果のある使い方を紹介します。 amazon_associate_logo.jpg

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