
勤務先の会社がもし、社員にサービス残業や休日出勤を強制し、残業代や休日出勤手当は払わず、遅刻や目標未達成の都度罰金を徴収するような環境だったら、あなたはどうするだろうか。さらに、お客には虚偽の説明をするよう命令し、上司からのパワハラやセクハラが日常的にあり、ときには暴力が振るわれるような環境だったら――。
そして、労働基準監督署や監督省庁に告発したくても、経営者が「オレは昔、○○組(広域指定暴力団名)にいたことがあって、今もメンバーと付き合いがある」「(行政機関に)チクったりしたら、どうなるか、わかってるだろうな」などと日々吹聴するような環境ならどうするだろう。
さらに、絶対に身元をバラしたくないという条件で、決死の思いで告発しても、「あなたから寄せられた情報は公益通報の要件を満たしていません」「あなたのお話は聞かせていただきましたが、一方的な判断にならないよう確認のために、上長に当たる方にもヒアリングさせていただきます」などと言われたら、絶望的な気持ちになってしまうのではないだろうか。
以上は、何も極端なケースを挙げた仮の話ではない。現在の東京において、実際に起きている事態なのである。
虚偽だらけの労働条件
東京都のとある中堅企業・A社は、新卒採用を行っており、就活情報サイト上のA社の募集ページを読むと、いかにも働きやすい雰囲気のように感じられる。
しかし、A社の内情は「あらゆるブラックな事象の巣窟」なのだ。
まず、A社では人材募集の際に「勤務時間10:00~19:30(実働8時間)」「特別休暇、GW休暇、誕生日休暇」などと謳っておきながら、従業員には9時始業を強制し、週休2日どころか休日も強制的に出勤させられることが常態化している。もちろん、休日出勤に対して代休や振替休日が与えられることもない。有休取得などもってのほか、という雰囲気なのである。
また、就活サイト上では福利厚生の一環として「資格手当」「資格合格祝金」なども支給されると記載されているが、そのような各種手当はもちろんのこと、タイムカードが存在しないため残業代も支払われないような状況なのだ。
これらはまだ序の口に過ぎず、A社にはほかにもブラックな事象が多数ある。