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外国人は無料、自国民は高額入場料――シンガポールの“自国を守る”カジノ戦略

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 長い停滞を続ける日本経済にとって、2020年の東京オリンピックは一つの「突破口」であり、関連需要による経済効果を期待する向きは多い。

 しかし、言うまでもなくオリンピックは一度きりのイベントである。求められているのは、オリンピックのあるなしにかかわらず継続的に雇用や消費を生み出すことなのだが、今のところ政府はビジョンを示せていない。

 今後人口が減り続ける日本で内需を伸ばすのは至難の業。ならば外資、あるいは外国人を呼び込もうという話になるが、この材料として2000年前後から浮上しては消えてを繰り返してきたのが「カジノ」だ。

 今日まさに「カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備推進法案」が衆院内閣委員会で可決されたが、「カジノ」は知っていても「IR(統合型リゾート)」の方は知らないという人は多いかもしれない。

 『カジノとIR。日本の未来を決めるのはどっちだっ!?』(高城剛著、集英社刊)は、ともすると混同されがちな両者の違いを解説するとともに、国によってはすでに経済を支えるまでになっているIRの事例や、日本が参入するとなった時に取るべき戦略を示している。

カジノ衰退後の新潮流「IR」とは

 日本国内ではカジノを始めれば確実に外国人観光客が集まるように語られがちだが、高城氏によると、集客装置としての「カジノ」はもう世界的には衰退に向かっているという。

 その代わりに世界各地で主流になっているのが、カジノをはじめ、ホテルや商業施設、アミューズメントパーク、国際会議場などが一体となった「IR」である。

 複合的な施設だからこそ、店舗の誘致や集客の仕組みなどでさまざまなアレンジが可能になる。カジノと命運を共にするのではなく、客にお金と落とさせるエンジンであるカジノを生かすために、施設や都市全体をデザインするという考え方が必要になる。

自国民を守りつつ外国人にカネを落とさせる シンガポールのIR運営

 このIRでもっとも成功している国の一つが、シンガポールだ。資源に恵まれていない小さな島国、ということで日本と地理的な共通点の多いシンガポールだが、2010年に初めて国内にIRをオープンさせて以来、観光客と観光収入が共に大幅にアップした。

 その一つ、「マリーナベイ・サンズ」は総工費56億ドルをかけて建設された世界最大級のIR。57階建て3棟の高層タワーホテルを中心に、大型MICE施設(会議場や展示場などビジネス向け施設)、大型ショッピングモール、劇場とミュージアム、そしてカジノ施設で構成されている。

 モールには52軒のレストランとクラブ、250以上のブランドショップが並び、とにかく規模が大きい。劇場もミュージアムもともにワールドクラスのエンターテインメントが催される。

 そして、この施設の収益の80%を稼ぎ出す「集金エンジン」であるカジノは、スロットマシンが1,600台、ゲームテーブルが500台と単独では世界最大の規模である。

外国人を遊ばせて外貨収益を吸い上げるシンガポールのカジノ戦略

 高城氏は、シンガポールのIR運営を、日本が見習うべき点が多いとしているが、その一つが「カジノの位置づけ」だ。

 建国以来、ギャンブルがご法度だったこともあり、今でもシンガポールでカジノは「背徳」。IRのカジノ運営にしても、国家も国民も関わっておらず、外国資本によって建設し、外国人が運営し、外国人が遊興する。

 外国人は入場無料なのに対して、シンガポール人と、シンガポールの永住権取得者には高額な入場料を取ることで、自国民をギャンブルと切り離しているのだ。

 自分の国で外国人を遊ばせて、莫大な外貨収益を吸い上げる。この辺りは、人口比率の5%と「ギャンブル依存症大国」である日本も参考にすべき戦略だろう。

 シンガポールだけでなく、フィリピンのマニラやベトナムなど、今アジアはIRの建設ラッシュであり、今後日本が参入するとしたら独自性を出すための戦略が必要となる。高城氏はこの点についても、都市ぐるみのユニークな開発のアイデアを綴っており、その先見性は健在だ。

 いずれ日本の観光政策のカギを握るとされるIRについて、今のうちに知識を仕入れておく意味でも本書を手に取ってみてはいかがだろうか。

(新刊JP編集部)

※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。

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