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江川紹子の「事件ウオッチ」第69回

オスプレイだけではない!【相次ぐ米軍機の重大事故】と侵害されたままの日本の主権

文=江川紹子/ジャーナリスト
オスプレイだけではない!【相次ぐ米軍機の重大事故】と侵害されたままの日本の主権の画像1オスプレイ(アフロ)

 米海兵隊の航空機事故が相次いでいる。

 13日夜、沖縄県名護市沿岸で、米軍普天間飛行場所属の新型輸送機MV-22オスプレイが大破する事故が起き、乗員5人のうち2人がケガをした。

上昇している米海兵隊の重大事故率

 国内では今月7日、米軍岩国基地(山口県岩国市)所属の戦闘攻撃機FA-18ホーネットが、高知県沖の太平洋上に墜落する事故があったばかりだ。この事故ではパイロット1人が緊急脱出し、海上保安庁や海上自衛隊が捜索を行った。海自の救難飛行艇が遺体を発見し、米海兵隊員の死亡を確認した。

 また9月22日には、やはり米海兵隊所属の攻撃機AV-8ハリアーが沖縄本島沖の海上で墜落事故を起こしている。パイロットは脱出し、米軍の救助隊に救出された。

 いずれも、米海軍安全センターが「クラスA」と位置づける重大事故に認定されている。クラスAは、被害額200万ドル以上、または死者が発生した事故をいう。

 重大事故が相次いでいるのは、在日海兵隊に限った現象ではない。同センターの集計によると、2016年米会計年度(15年10月~16年9月)に米海兵隊所属航空機が起こしたクラスAの重大事故は、沖縄でのAV-8の事故を含めて8件。10万飛行時間あたりの重大事故率は3.31件で、14年度の1.90件から2年連続で増加した。事故を起こした機種は、AV-8ハリアーのほか、FA-18ホーネット、MV-22オスプレイ、大型輸送ヘリCH-53Eスーパースタリオンとなっている。

 そして、今年10月から始まる17年度では、わずか2カ月半の間に、今回のオスプレイ事故を含め、すでに6件のクラスA事故が起きている。これを「たまたま不運が重なった」という言葉で片付けていいのか。

 3年前に沖縄にオスプレイが配備された時から「オスプレイは危険」として強い反対運動が起きた経緯もあり、日本のメディアでは今回の事故後も「起こるべくして起きた事故」「危険露呈したオスプレイ」など、同機種の危険性をクローズアップする報道が目立つ。ただ、重大事故の件数としては、オスプレイよりFA-18やAV-8などの攻撃機のほうが多い。オスプレイという機種ばかりに注目するより、海兵隊の重大事故が増加していることへの視点がもっと必要ではないだろうか。

 米海兵隊航空機が今年起こした事故のなかで最大の犠牲を出したのは、1月にハワイ・オアフ島沖で起きた大型輸送ヘリCH-53Eスーパースタリオンの衝突だ。同機が2機、夜間訓練中に衝突して爆発炎上し、乗員計12人が全員即死した。米海兵隊の調査報告書によれば、衝突した2機の操縦士の飛行訓練時間は月に4~5時間程度で、海兵隊の規則で定められている月15時間の基準をはるかに下回っていたため、夜間飛行訓練に必要な技量が不足していたという。

 これを報じた11月4日付沖縄タイムスによると、「米海兵隊幹部らは、国防費の大幅削減が機体の整備など運用面に深刻な影響を及ぼし、操縦士らの飛行訓練の不足を招いているなどと懸念を表明していた」という。

 ただ、同センターが集計している海軍所属の航空機の重大事故率は、14年度の1.78件が、15年度に1.05件、さらに16年度には0.81件と減少している。

 それを考えると、必ずしも国防費の削減だけを、海兵隊航空機事故が増加している原因と見ることはできないのではないか。

 なぜ、海兵隊は重大事故率が上昇しているのか。その原因解明と対策については、日本政府として米側に確認し、明らかにしてもらいたい。それをやらずに、今回の事故の直接的原因だけ通り一遍の説明を受け、「機体の安全性には問題はない」などとして事足れりとするのでは困る。

あくまでアメリカ流を貫き通す米軍

 それにしても、日本で起きた事故であるというのに、今回もまた原因調査においては日本は蚊帳の外に置かれている。

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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