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鈴木貴博「経済を読む“目玉”」

激安のNetflixなどにユーザー流出のスカパー!の苦悩…Jリーグ放映失い苦境?

文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役
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 その価格帯が1000円前後というのは画期的だ。なにしろスカパーの場合、47チャンネル見放題の「新基本パック」の視聴料が月額3672円いう水準だ。地上波では満足できない多チャンネル志向の視聴者にとっては、スカパー!から動画配信に契約を切り替えることで番組視聴の費用が一気に3分の1から4分の1レベルに減ることになる。

 こうして新規に登場した有料動画配信サービスに、少しずつスカパー!加入者が削りとられていくという現象が起きているわけだ。

決断を迫られる時期

 そんなスカパー!にとって、Jリーグはある意味で最重要のコンテンツだった。なにしろサッカーのファンの数は絶大だ。とはいっても、その多くは不定期に行われるサッカー日本代表の試合を地上波で見るだけという視聴者層である。スカパー!に加入するほどのサッカーファンというと、ファンの中でもコアな層で、端的にいえば地元のJリーグチームのサポーター層ということになる。

 そのようなコアなファンの人数は、実は多い。JリーグはJ1からJ3まで全国津々浦々に56のクラブチームがあり、それぞれのチームには数万人単位でサポーターがいる。そしてクラブ数は今後も増えていく予定にある。各チームが1万人のスカパー!加入者を連れてくるとすれば計算上はJリーグには50万人の加入者を獲得できるパワーがある。

 だから来年のスカパー!は、それだけ大変になる。50万人が離れるとしたら、いよいよ加入者が300万件の大台を割り込む危険性を帯びてきたわけだ。

 そもそも衛星を使って映像コンテンツを配信するというビジネスモデル自体が、時代に合わなくなってきた感は強い。衛星というインフラコストがかかる分、同じコンテンツ配信企業でもインターネットという、インフラを自分で維持しなくてもいい有料動画配信サービスとはコスト競争で勝てないのだ。

 こうして長い目で見れば、スカパー!自体も衛星インフラの上では成立できず、どこかの段階でインターネットにインフラを移す決断を迫られる時期がくるだろう。

加入者減少の影響は限定的?

 ただ、今回のJリーグの終了という事件だけについていえば、スカパー!の加入者減少の影響は限定的でもある。その理由はこういうことだ。

 テレビの地上波というのは、雑誌でいえば「週刊文春」(文藝春秋)や「SPA!」(扶桑社)、「週刊現代」(講談社)のような総合誌である。それに対してスカパー!は47チャンネルあるといっても、加入者はそのうちの一部の偏ったチャンネルしか見ない。釣りが好きな人は釣りビジョンを、歴史が好きな人はヒストリーチャンネルを、音楽が好きな人は音楽のチャンネルをというかたちで、雑誌でいえば専門誌の読者のような視聴者が集まって330万人の加入者として積みあがっている。

鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役

鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役

事業戦略コンサルタント。百年コンサルティング代表取締役。1986年、ボストンコンサルティンググループ入社。持ち前の分析力と洞察力を武器に、企業間の複雑な競争原理を解明する専門家として13年にわたり活躍。伝説のコンサルタントと呼ばれる。ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)の起業に参画後、03年に独立し、百年コンサルティングを創業。以来、最も創造的でかつ「がつん!」とインパクトのある事業戦略作りができるアドバイザーとして大企業からの注文が途絶えたことがない。主な著書に『日本経済復活の書』『日本経済予言の書』(PHP研究所)、『戦略思考トレーニング』シリーズ(日本経済新聞出版社)、『仕事消滅』(講談社)などがある。
百年コンサルティング 代表 鈴木貴博公式ページ

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