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黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

突然に夫を襲う「熟年離婚」増加、資産も家も失い賃貸暮らし…超重要なお金の話

文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー
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 さらに年金受給を受ける本人が、原則として離婚後も含め、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間の合計が25年以上ない場合、年金受給資格が発生しない(ただし、10月以降、10年に短縮の予定)。

 つまり、せっかく年金分割をしても年金自体が受け取れないのでは意味がないし、受け取れるのは、自分が年金受給開始年齢に達してからだ。それまでに空白期間がある場合は、その間の収入を確保しておく必要がある。そして分割請求には期限がある。離婚後2年以内なので、うっかり手続きを失念しないように注意したい。

 では肝心な点。どれくらい年金額が増えるか試算してみよう。

 たとえば、前述のA子さんの夫が受け取れる年金見込み額が、国民年金部分80万円、厚生年金保険部分140万円の合計220万円だとする。この半分の110万円がもらえると思っている人が多いが、対象となるのは、厚生年金保険のうち婚姻期間中の部分だけ。これが110万円だとすると、A子さんの年金に上乗せされるのは55万円のみだ。

 試算してみて、意外に少なくてがっかりする人も多いかもしれない。現実は厳しいということだろう。

「退職金」は自分のモノと思ったら大間違い

 また、公的年金と並び老後の大切な原資である「退職金」についても、世の多くの男性が誤解しているようだ。

 定年後に受け取る退職金は夫婦で築き上げた財産。妻にも所有権が発生する。定年後に離婚した場合、退職金が妻に分割される可能性もあるのだ。

 定年直後のBさん(60代)は、ある日突然、40年近く連れ添った妻から離婚を迫られた。弁護士と協議の結果、Bさんの退職金は分割された上、自宅は妻の実家の敷地内に建てられていたため、マイホームまで失うはめに。さらに、末っ子がまだ大学生ということで、養育費も支払わなければならない。

 結局、退職金を含め3000万円近くあった資産のうち残ったのは1200万円のみ。子どもは、すでに全員妻の味方だ。「イザとなったら子どもに面倒を見てもらう」というBさんの、子どもや孫に囲まれた悠々自適な老後生活は、見果てぬ夢となりそうだ。現在Bさんは、賃貸物件に住み、定年前に働いていた会社に再雇用してもらって働いている。

熟年離婚は財産分与が大きな争点となる

 熟年離婚がほかの離婚と区別されて問題視されるのは、婚姻期間が長くなると、その間に蓄積された財産が大きくなり、財産分与が大きな争点となるからだ。

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

 1969年富山県富山市生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年、株式会社日本総合研究所に入社。在職中に、FP資格を取得し、1997年同社退社。翌年、独立系FPとして転身を図る。2009年末に乳がん告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、NPO法人キャンサーネットジャパン・アドバイザリーボード(外部評価委員会)メンバー、NPO法人がんと暮らしを考える会理事なども務める。著書に「がんとお金の本」、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)など。近著は「親の介護とお金が心配です」(主婦の友社)(監修)(6月21日発売)
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