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手島直樹「マーケット・インテリジェンスを磨く」

「卓越企業」ユニ・チャームの挫折、失速は不可避…「非常識的高収益」コカ・コーラとの違い

文=手島直樹/小樽商科大学ビジネススクール准教授
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 この計算で重要となるのは次の2点であり、ユニ・チャームのケースを理解するためには特に(2)が重要となります。

(1)超過リターンが高水準であるほど、企業価値は高まる
(2)超過リターンを一時的ではなく、持続的に高水準に維持できるほど企業価値が高まる

ユニ・チャームに起きたことは経済学的には当然なこと

 では、ユニ・チャームのケースを日本経済新聞の記事に基づいて確認していきましょう。同社はアジアにいち早く進出し、先行者利益を獲得しました。たとえば、インドネシアには1997年に進出し、圧倒的なシェアを獲得し、営業利益率も約20%という高水準となっていたのです。これにより多額の超過リターンを稼ぎ企業価値を創造することができたのです。

 しかし、問題となるのは、同社が儲かれば儲かるほど花王などの手ごわい競合他社が黙って見ているはずはない、ということです。実際、その後競合他社がアジア市場に参入し、競争が激化しました。その結果として、アジア地域での同社の営業利益率は、かつては優に10%を超えていたものが、現在では6%にまで下落し続けています(日本国内では逆に上昇傾向にあり、現在は16%)。これでは企業価値創造のモメンタムが減速するのは当然です。

 日経新聞記事によれば、「アジアに変調の兆しが出た2013年ごろに手を打っていれば」と高原豪久社長は悔やんでいるようですが、経済学的には収益性の悪化は回避することが困難な問題です。前述したように、超過リターンが稼げる市場があれば、競合他社が参入し競争が激化することとなり、結果的に収益性は悪化し、超過リターンは減少するものなのです。実際、ディスカウントキャッシュフロー(DCF)モデルで企業価値評価をされた経験のある方はご存じだと思いますが、図表1にあるように超過リターンは徐々に減少し、最終的にはゼロになる(もしくはかなり低水準にまで下落する)前提でモデルを構築することが一般的です。

「卓越企業」ユニ・チャームの挫折、失速は不可避…「非常識的高収益」コカ・コーラとの違いの画像3

 結局、ユニ・チャームの株価パフォーマンスがTOPIXとほぼ同水準にまで減速したのは、ご多分に洩れず超過リターンを持続的に維持できないと株式市場に判断されたことが原因なのです。ある意味で「お約束」であり、この現象は同社に限ったことではありません。もちろん、経営者としては高原社長が悔やむように、なんらかの手を打つ必要がありますが、競争社会においてはかなり実現が困難なことなのです。

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