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手島直樹「マーケット・インテリジェンスを磨く」

「卓越企業」ユニ・チャームの挫折、失速は不可避…「非常識的高収益」コカ・コーラとの違い

文=手島直樹/小樽商科大学ビジネススクール准教授
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バフェットの投資先に見る持続的に競争優位性を維持する企業の特徴

 もちろん世界には、ROIC/WACCスプレッドであれエクイティスプレッドであれ、持続的に高水準の超過リターンを維持する企業も極めて例外的に存在します。

 投資の神様といわれるウォーレン・バフェットは、企業の持つ競争優位性を高収益性という「城」を守る「堀」にたとえており、持続的な競争優位性の有無を基準に投資判断を行っています。しっかりとした「堀」が構築されていれば、競争優位性が守られ、その結果、高収益性を維持できるのです。

 バフェットの考えでは「堀」には2種類があります。まずは、ブランド力です。彼の投資先ではコカ・コーラがその典型例です。ブランド力があるため、新規参入企業を撃破し、高収益性を維持できるのです。次にコスト競争力です。彼の投資先ではウォルマートがその典型例です。他社にはまねができない低コストオペレーションにより、エブリデイロープライス(毎日低価格)でも高収益性を維持しています。この結果、両社とも何十年にもにわたりROIC>WACC、ROE>株主資本コストという超過リターンを実現できているのです。

 これは経済学的には非常識ですが、強力なブランド力やコスト競争力があれば非常識を常識に変えることができるのです。逆にいえば、こうした持続的な競争優位性がなければ、経済学の常識通りに株価が形成されることになります。

 では、このような「堀」を構築するために企業はどうすればよいのか。当たり前の話ですが、「堀」を構築するために持続的に投資を続けるしかありません。つまり、自社の能力を高めるための努力を惜しまないことです。もちろん努力をし続けたからといって「堀」が確実に構築できるとは限りませんが、努力をしなければ「堀」を構築することは100%不可能です。コカ・コーラもウォルマートもそうした努力を継続してきたからこそ今があるのです。

 事業からキャッシュフローを生み出し、その多くを「堀」の構築のための再投資に回す。このサイクルを回し続ける会社だけが持続的に企業価値を創造することができるのです。生きたお金の使い方、つまり資本配分ができるか否かがカギなのです。株主還元にいくら資本配分をしたところで「堀」の構築にはつながらないのです。
(文=手島直樹/小樽商科大学ビジネススクール准教授)

●手島直樹
慶應義塾大学商学部卒業、米ピッツバーグ大学経営大学院MBA。CFA協会認定証券アナリスト、日本アナリスト協会検定会員。アクセンチュア、日産自動車財務部及びIR部を経て、インサイトフィナンシャル株式会社設立。2015年4月より現職。著書に『まだ「ファイナンス理論」を使いますか?-MBA依存症が企業価値を壊す』(2012年、日本経済新聞出版社)、『ROEが奪う競争力-「ファイナンス理論」の誤解が経営を壊す』(2015年、日本経済新聞出版社)、『株主に文句を言わせない!バフェットに学ぶ価値創造経営』(2016年、日本経済新聞出版社)。

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