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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

トランプ、恫喝ツイッター恐怖政治の代償…米中軍事衝突の懸念、企業がご機嫌取り合戦

文=相馬勝/ジャーナリスト

 中国企業も右に倣えだ。中国を代表する民営企業の雄で、ネット通販最大手アリババ集団の馬雲会長も9日、トランプタワーでトランプ氏と会談。馬氏は「中国には3億人以上の中間所得層と海外商品への旺盛な需要がある」などと語り、米国製の衣料品などを中国で売り込み、5年間でアメリカ国民100万人の雇用を創出する「BABA」計画について話し合ったことを明らかにした。

 また、米紙ニューヨーク・タイムズによると、トウ小平氏の孫娘の夫で、中国有数の保険会社、安邦保険集団会長の呉小暉氏は昨年11月、トランプ氏の娘婿ジャレッド・クシュナー氏とニューヨーク最高級老舗ホテルの中華レストランで秘密会談を行っていた。会食では最高級料理と1本2100ドル(約24万円)の高級ワインを何本も開け、トランプ氏の大統領選当選を祝福したという。

 クシュナー氏は米大統領上級顧問に指名されており、トランプ政権の最重要人物だが、クシュナー氏の中国人脈はかなり豊富なようだ。実は、クシュナー氏の兄弟が興した不動産投資会社がアリババの馬会長の資金援助を受けていることから、クシュナー氏が馬氏と親しくなった。また、馬氏とソフトバンクの孫社長もビジネスで親しい関係を築いており、孫氏は馬氏の紹介でクシュナー氏と会い、トランプ氏との会談の約束を取り付けたというわけだ。

米中軍事衝突の可能性も

 その一方で、トランプ氏は記者会見で、オバマ政権下では中国が「経済面で、また南シナ海での巨大な要塞の建設で米国の弱みにつけ込んでいる」と批判するなど、中国に厳しい姿勢をとっている。中国側もトランプ氏がツイッターで、これまでの米政権が順守してきた「一つの中国」政策を無視するような発言を行い、台湾の蔡英文総統と電話会談を行ったことで、中国初の空母「遼寧」が東シナ海から南シナ海を経て、再び東シナ海に戻るなど、台湾を中心に一周するコースをとるなど激しく反発しているようだ。

 特に、中国の習近平国家主席は2013年6月のオバマ大統領との首脳会談で、「広大な太平洋には中国と米国の両国を受け入れる十分な空間がある」と発言している。これは中国が太平洋に進出し、ハワイを中心として西半分は中国が、東半分は米国が実質的に統治するということだ。すなわち、習氏の発言は「中国がアジア覇権をとる」という野望をオブラートにくるんだものといえる。

 このままでは、南シナ海問題などで中国を激しく批判するトランプ氏の大統領在任中に、台湾や南シナ海をめぐって、米中両国が軍事的に衝突する事態も考えられなくもないが、その際、米大統領上級顧問に指名されているクシュナー氏の出方がカギを握るとみられる。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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