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石堂徹生「危ない食品の時代、何を食べればよいのか」

ココイチ事件で重大な問題浮上…食の安全を揺るがす違法業者が跋扈

文=石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

「おまえら、何ぼにするんだと。排出企業から俺は全権を依頼されているから、もう俺の自由だと」(同)

 そこで、たとえばキロ15円の処理料金を10円にし、そのうち半分をブローカーの取り分にしてしまう。

「こういう実態が今、全国で広がっている。リーマンショック以降、それがもう本当にひどい状態になっているということをわかっていただきたい」(同)

大変生々しくて、非常に重要な説明

 この一連の山田委員の説明について、合同会合の石川雅紀座長(神戸大学大学院経済学研究科教授、環境省の食品リサイクル専門委員会座長)は、「大変生々しくて、非常に重要なご説明をいただきました」と語った。

 また、環境省の食品リサイクル専門委員会と同様に、循環型社会部の委員会のひとつである廃棄物処理制度専門委員会(第4回、16年8月2日)でも、山田委員と同じ全国清掃事業連合会の説明員が、ブローカーの件について、類似の説明をした。

 その際、同専門委員会の田崎智宏委員(国立環境研究所資源環境・廃棄物研究センター循環型社会システム研究室長)が「ただいまご説明のあった責任の形骸化、私も非常に心配しているところです」と語った。

「ブローカーのあっせんというところで、家電リサイクル法と廃掃法のすき間でちょっと問題が起きているので、あわせて説明させていただきます」(田崎委員)

 家電リサイクル法では、小売事業者が消費者から使用済み家電を受け取り、メーカーに引き渡すことになっている。ところが、小売事業者が消費者に対して廃棄物処理業者を斡旋し、自分の責任を免れている事例があるという。

「あっせんするときに、コストが安いからと、適正処理という話は抜きにしてコストだけというような話は、これは到底許されない行為だと思っております」(同)

旧厚生省が適切な対応を求めたが

 実は、ブローカーの介在が問題になったのは、今回が初めてではない。1999年8月30日に発表された、当時の厚生省による都道府県の一般廃棄物処理行政担当部(局)長あての通知「一般廃棄物の適正な処理の確保について」には、次のような旨が書かれている。

 まず、前置きとして、廃掃法の決まりが書いてある。一般廃棄物の処理(収集運搬と処分)は市町村の固有事務(市町村が自治体としての目的を達成するために行う仕事)だ。ただ市町村長の許可を受けた処理業者が一般廃棄物の処理を行う場合でも、「市町村の処理責任の原則」の下、処理業者は市町村の監督を受けて適正に処理しなければならない。

 ところが、廃掃法の下で、市町村の規制権限が及ばない第三者が、一般廃棄物の排出事業者と処理業者の間の契約に介在し、第七条で禁止される一般廃棄物処理の委託行為に当たる(処理業者は一般廃棄物の処分を他人に委託してはならない)と認められる場合がある。

 そのことなどから、「一般廃棄物の適切な処理の観点から必要があると認められる場合、排出事業者と処理業者などに対し指導などを行うことによって『適切に対応』し、一般廃棄物の適正な処理の確保に遺憾のなきを期されたい」これについて、先の全国清掃事業連合会の説明員は、こう語った。

「しかし、適切に対応するだけを求めるだけでしたものですから、どういうことになったかというと、(略)最近では、(略)ブローカーが、(略)代理等という立場を超え、排出事業者と廃棄物処理業者との間に介在して主導権を持ち、(略)主体性が低下するような事態が生じていると聞いております」

食品リサイクルの根幹を揺るがす“新たな闇の世界”を注視

 実はこのブローカーの件について、その後、議論したとみられる環境、農水両省の審議会の食品リサイクル関連委員会合同会合(第15回、16年9月8日)と、環境省中央環境審議会廃棄物制度専門委員会(第15回、16年9月1日)の議事録は、現時点(16年12月7日)ではまだ公開されていない。

 この「ブローカー問題」は、食品廃棄物処理と一体化して進められる食品リサイクルシステムの根幹を揺るがせにしかねず、その意味でこれはまさに“新たな闇の世界”であり、その今後の動きを注視したい。
(文=石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト)

【編注1】環境省中央環境審議会食品リサイクル専門委員会、農水省食料・農業・農村政策審議会食料産業部会食品リサイクル小委員会

【編注2】食品廃棄物等=食用後、または食用に供されずに廃棄されたもの。食品の製造・加工、調理の過程で副次的に得られたもののうち、食用に供することができないもの

【編注3】(1)食品リサイクル法の「判断基準省令」=食品循環資源の再生利用等の促進に関する食品関連事業者の判断の基準となるべき事項を定める省令(2001年5月30日財務省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省・環境省令第4号)
(2)「同『判断基準省令』の改定について」<答申><案>(16年9月)環境省中央環境審議会循環型社会部会食品リサイクル専門委員会と、農水省食料・農業・農村政策審議会食料産業部会食品リサイクル小委員会との第15回合同会合の資料1。2016年9月8日

【編注4】ガイドライン=「食品リサイクル法に基づく食品廃棄物等の不適正な転売の防止の取組強化のための食品関連事業者向けガイドライン」(案)農林水産省食料産業局バイオマス循環資源化課食品産業環境対策室、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル部企画課リサイクル推進室。環境省中央環境審議会循環型社会部会(第15回、16年9月14日)の参考資料1-2

【編注5】(1)環境省中央環境審議会循環型社会部会廃棄物処理制度専門委員会(第3回、16年6月30日)資料3「ダイコー(株)による廃棄物の不適正保管について」(愛知県発表資料/筆者推定)
(2)「ダイコー(株)海津倉庫の廃棄食品等の全量撤去について」(岐阜県発表資料、16年8月31日)

石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

1945年、宮城県生まれ。東北大学農学部卒。養鶏業界紙記者、市場調査会社などを経て、フリーに。現在、農業・食品ジャーナリスト

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