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舘内端「クルマの危機と未来」

充電せず走れる日産ノート、トヨタのプリウスを凌駕…開いてしまった「パンドラの箱」

文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表
充電せず走れる日産ノート、トヨタのプリウスを凌駕…開いてしまった「パンドラの箱」の画像1日産・ノートe-POWER X(「Wikipedia」より/CEFICEFI)

EVは充電せずに走れるか

 果たして電気自動車(EV)は充電せずに走れるのだろうか。答えは否である。EVは電池に蓄えた(つまり充電した)電気がなくなれば止まってしまう。EVは充電しなければ走れない。

 ところが、2016年11月に日産自動車が一部を改良して発売した「ノートe-POWER」は、充電せずに走れるEVだという。それが功を奏したのか、発売と同時に2万台も受注し、たちまち月間販売台数で常勝のトヨタ自動車のハイブリッド車(HV)、「プリウス」と「アクア」を抜いて1位に躍り出た。しかし、なぜ充電せずに走れるのか。疑問は残る。

ノートにはエンジンがある

 
 実は、ノートには排気量1.2リットルのガソリンエンジンが搭載されている。最高出力は58kW(79馬力)である。搭載された電池をこのエンジンで充電する。これであれば、確かに自宅などの外部電源からは充電せずに走れる。そして、ガソリンがある限り電欠の心配はない。EVの弱点を克服したEVなのだ。

 では、エンジンがあるのにEVというのは、なぜか。

 ノートには、1.5kWhのリチウムイオン電池が搭載されている。これは750Wのヘアドライヤーを2時間使ったときと同等の電力量だ。あるいは100 Wの電球15個を1時間点灯したときの電力量と同等である。決して多いわけではない。

 たとえば、一般家庭の1日の消費電力量は、2人世帯でエアコンを使わなければおよそ8kWh、使うと17kWh近くに跳ね上がる。搭載されたエンジンで1.5kWhの電力量を充電すると、ノートは10kmほど走れる。つまり、10kmはEVなのだ。では、さらに走るにはどうしているのだろうか。

エンジンはタイヤを駆動しない

 
 電池の電気がなくなると、今度はエンジンで発電した電気を使ってモーターを回す。エンジン→発電機→インバーター→電池→モーター→タイヤという経路でタイヤを駆動する。

 これではあたかもエンジンがタイヤを駆動しているように見えるが、そうではない。タイヤを直接駆動するのは、エンジンではなくモーターだ。アクセルはモーターにつながれている。エンジンは、電池の電力量の残量とアクセルからの指令の2つのデータで、出力を自動調整する。電池に十分電気が蓄えられているときは、アクセルを深く踏み込んでもエンジンがかかるとは限らない。

 ノートは、発電用のエンジンを持つが、モーターで駆動するHVである。従来の分類では、シリーズ型のHVとなる。

舘内端/自動車評論家

舘内端/自動車評論家

1947年、群馬県に生まれ、日本大学理工学部卒業。東大宇宙航空研究所勤務の後、レーシングカーの設計に携わる。
現在は、テクノロジーと文化の両面から車を論じることができる自動車評論家として活躍。「ビジネスジャーナル(web)」等、連載多数。
94年に市民団体の日本EVクラブを設立。エコカーの普及を図る。その活動に対して、98年に環境大臣から表彰を受ける。
2009年にミラEV(日本EVクラブ製作)で東京〜大阪555.6kmを途中無充電で走行。電気自動車1充電航続距離世界最長記録を達成した(ギネス世界記録認定)。
10年5月、ミラEVにて1充電航続距離1003.184kmを走行(テストコース)、世界記録を更新した(ギネス世界記録認定)。
EVに25年関わった経験を持つ唯一人の自動車評論家。著書は、「トヨタの危機」宝島社、「すべての自動車人へ」双葉社、「800馬力のエコロジー」ソニー・マガジンズ など。
23年度から山形の「電動モビリティシステム専門職大学」(新設予定)の准教授として就任予定。
日本EVクラブ

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