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トランプ、国境税と経済の基本を理解していない可能性…思いつき政治で米国経済自滅も

文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授
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 記者会見でも、トランプ氏が企業を強制的に米国に連れ戻し、雇用を増やそうとしていることがはっきりした。その手段として示されたのが国境税だ。同氏は米国の貿易赤字はメキシコ、中国、日本に原因があると非難した。そして、「米国から出て行った企業には、国境で多額の税を課す」と明言した。これはいってみれば脅しだ。いつまでも企業が政府の脅しに黙って従うとは考えづらいものの、今のところ、多くの企業はトランプ氏の警告を受け入れている。同氏は、今後も企業を強制的に米国に回帰させ、それによって、米国を世界でもっとも偉大な経済にしようとするだろう。これがトランプ流の米国第一への道である。

国境税とは何か

 
 記者会見でトランプ氏が国境税に言及したことを受けて、にわかに国境税への関心が高まっている。まず、国境税とは「国境税調整」と呼ばれる税のひとつであり、トランプ氏が生み出したものではない。OECD(経済協力開発機構)は国境税を、モノを輸出する際、その国でかけられている税率の全部、あるいは一部を免除し、モノを輸入する場合には、税の全部または一部を輸入産品に課す税制と定義している。トランプがこの定義を理解しているかは不明だ。

 国境税は、産品が消費される国で課税されるべきとの考えに立脚している。これを「仕向地課税主義」や「消費地課税主義」と呼ぶ。たとえば、日本の消費税は仕向地課税主義に則っている。自動車などの輸入品には消費税が課せられる。一方、日本からドイツなどに輸出される自動車への消費税は免除される。

 米国には日本のような、国全体で統一された消費税はない。その代わりに売上税があるが、これは州の管轄下にある。連邦レベルで税金の国境調整を行うことは難しい。そこで、税制改革を進めようとしている米共和党は、法人税率の引き下げ(35%から20%)に加え、仕向地課税主義の導入も検討してきた。それが実現すれば、米国への企業の回帰と輸出企業のサポートを、同時に進めることができると考えられるからだ。

 一方のトランプ氏は法人税率を15%にまで引き下げ、米国を拠点とする企業が税率の低い“タックスヘイヴン”に滞留させてきた利益に課税することを重視してきた。同氏は、この課税によってインフラ投資の財源を確保すると主張してきた。

 今回の記者会見でトランプ氏が掲げた国境税が、共和党の目指すコンセプトとイコールかはわからない。それでも、今後の米国が輸出企業へのメリットを重視した政策に向かっていることは確かだ。法人税制のなかに仕向地課税主義の制度が組み込まれれば、企業は米国を拠点に輸出で稼ぐビジネスモデルを選択しやすくなるだろう。

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