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まず数千人のボランティアを募り、公平に2つのグループに分けます。このとき、両グループには、結果に影響を及ぼすかもしれないあらゆる条件が均等になっていなければなりません。年齢や性別はもちろん、血圧やコレステロールなどの検査値、喫煙や飲酒の習慣などで、ときには学歴や職業などについても調査が行われ、それらの値が均等になるように、コンピューターを使った振り分けが行われます。
その一方のグループには本物の薬を、また他方には偽薬を飲み続けてもらうのですが、この場合の偽薬は「プラセボ」と呼ばれ、薬を飲んでいないことの心理的な影響を排除する上で大切な役割を果たします。
こうして数年後、どちらのグループで「血圧が下がっていたか」「高血圧が原因となる脳卒中が予防できたか」「寿命が延びていたか」などが比較されます。特に大切なのは、寿命が延びていたかどうかです。いくら血圧が下がっても、またいくら脳卒中が予防できても、薬には必ず副作用があり、寿命が延びるとは限らないからです。
ただし実際には、寿命の代わりに「原因を問わず死亡した人の総数」を調べることになります。この数字を「総死亡」といいます。
最近、高血圧の薬に関する衝撃的な論文が発表されました。世界中の大規模調査の論文を厳選し、総括を行っている組織があり、「コクラン共同計画」と呼ばれています。その組織から発行された論文集の1つに、血圧の薬の調査データを総括した結果が掲載されたのです。
結論は、「総死亡を低下させる効果がある薬は、昔からあるサイアザイド系利尿薬だけ」というものでした。
ちなみに、この薬の現在の薬価は、先発品(かつての新薬)でさえわずか1錠9.6円、ジェネリック医薬品になると6.1円でしかありません。売れるだけ赤字になってしまいそうな値段で、この発表には世界中の製薬企業が青ざめたことでしょう。
(文=岡田正彦/新潟大学名誉教授)
参考文献:Wright JM, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2009.
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