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トランプ「脅迫的米国第一主義」で、中国の金融流動性枯渇と資金流出加速…世界経済混沌

文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授
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 このなかで経済成長率を高めるには、構造改革を進めて産業の創造的破壊を進めることが必要だ。それがイノベーションである。問題は、構造改革には一時的な失業の増加など、“痛み”が伴う。先行きの成長期待が抱きづらいなか、米国の社会が中長期的に必要な措置を受け入れ、一定の痛みに耐えられるかはわからない。こうして米国の政治は目先の民衆の満足を重視する“ポピュリズム政治”に流れてきた。これは欧州にも当てはまる。目先の成長を重視すると、どうしても自国の産業や雇用を守ることが優先されやすい。

 保護主義政策の手始めとして、トランプ大統領は企業に、米国向けの製品を米国で生産するよう求めている。就任とともに、トランプ大統領はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)、NAFTA(北米自由貿易協定)の離脱を表明した。そこには、国際社会に脅しをかけ、米国に有利な条件を引き出す狙いがあるのかもしれない。トランプ大統領は各国に、駐留米軍のコストを負担するよう求める可能性がある。これも、一つの交渉手段に使われるかもしれない。

保護主義政策の影響

 トランプ大統領は就任以前から、ツイッターを通して企業が米国向けのモノを輸入する場合、“国境税”をかけると脅してきた。脅迫を受け、自動車、IT企業を中心に、米国での雇用や設備投資を増やすことを表明する企業が出ている。足許、米国の労働市場は改善基調にある。そのなかで企業が採用を増やせば、労働市場は一段とひっ迫するだろう。そして、設備投資は米国への資金還流を支える。そのため、短期的に景気への期待は高まり、金利の上昇、ドル高がサポートされやすい。保護主義政策には一時的な効果がありそうだ。

 それ以上に、中長期的にはマイナス面が懸念される。世界経済全体が需給ギャップに陥るなか、一国が需要を独り占めしようとすると、その分、他国の成長に影響が出る。この影響を回避しようとすると、どうしても各国の政治は自国を優先し、需要を囲い込もうとするだろう。すでに、EU単一市場からの離脱を表明した英国は、米国の保護主義に近寄り、恩恵に与ろうと考えているようだ。

 一方、今後は米国に対抗して輸出振興を重視し、通貨の切り下げや貿易競争を仕掛ける国も出てくるはずだ。関税の引き上げなど、米国への報復措置も増えるだろう。こうしてグローバル化を支えた自由貿易体制は修正を余儀なくされ、世界経済は縮小均衡に向かうと考えられる。

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