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トランプ「脅迫的米国第一主義」で、中国の金融流動性枯渇と資金流出加速…世界経済混沌

文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授
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 トランプ政権は、各国と自由貿易協定(FTA)を締結すれば、自由貿易は存続可能だと考えている。しかし、保護主義政策への警戒感は強い。交渉は簡単には進まないだろう。特に、通商協定の締結には中長期的な時間が必要だ。結局、米国の保護主義政策は世界経済の需要を先取りして、目先の消費や投資につなげることにほかならない。米国政府が進めようとしているインフラ投資は、鉄鋼など重厚長大な産業への支援措置だ。その効果も、一時的なものに留まるだろう。このように考えると、保護主義政策のマイナス面は無視できない。最終的に、米国の景気回復の持続性が重要になる。

世界経済の不確実性上昇

 リーマンショック後の世界経済は、2009年から11年半ばごろまでは中国の財政出動に支えられた。それから現在まで、世界経済は米国の緩やかな景気回復に支えられている。新興国では中国を筆頭に、債務の増加や成長率の低下から資本が流出している。米国に代わる支えは見当たらず、その景気動向次第で、世界経済の不確実性は高まりやすい。

 いつまでも米国の景気回復が続くわけではない。過去、平均的な米国の景気拡張期間は5年だった。現在、景気の拡張は7年を超えたようだ。経験則では、徐々に景気のピークは近づいている可能性がある。米国政府は景気の息切れが見え始めた段階で、インフラ投資を進めれば景気を支えられると考えているのかもしれない。しかし、財政均衡を目指す共和党が、減税、インフラ投資計画をすんなりと受け入れるだろうか。その点は不確実だ。

 今のところ、米国政府は長期のドル高は重要であるとしつつも、足許はドルが強すぎると考えている。それでも、世界経済全体を見渡すと、物価上昇や利上げが期待できるのは米国だけだ。保護主義政策が目先のドル需要を支えるとの見方もある。大統領選挙後ほどではないにせよ、短期的に、主要通貨対比で考えるとドルは買われやすい。

 ドル高は米国企業の収益を押し下げる。それに加えドル買いは新興国通貨の下落につながり、債務問題への懸念が高まる恐れがある。すでに、中国、トルコなどではドル高の影響から短期金融市場の流動性が枯渇し始めた。中国の外貨準備残高の減少なども不安材料だ。世界経済全体が、ドル高の影響を吸収できるだけの余力を備えられていない。

 以上のように考えると、米国が保護主義政策ではなく、グローバル化の意義を再認識できるかが世界経済の安定には欠かせない。どのような意図があるにせよ、米国が自国優先の考えを続けることには無理がある。仏大統領選や英国のEU離脱交渉の影響など、政治に起因する不確実性要因も多い。米国の保護主義政策の進行とともに、世界経済の不確実性は高まるだろう。
(文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授)

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