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高橋篤史「経済禁忌録」

日本企業を脅かす村上ファンドOB、想定外の苦戦相次ぐ…リコーや第一生命も買い占め

文=高橋篤史/ジャーナリスト

 兄弟会社の関係にあった新立川航空機と立飛企業の株買い占めも、同時期に始まったものだった。投資額は213億円近くに達した。ただ、こちらはしばらく膠着状態が続くこととなる。そこでエフィッシモ側が繰り出したのが裁判戦術だった。提訴は09年9月のことだ。新立川航空機と立飛企業は互いに株式を24~30%持ち合っていた。法律上本来ならそれらの議決権は認められないが、両社はルールを踏まえず議決権として数えていた。言ってみれば、兄弟会社が馴れ合いでシャンシャン総会を仕切ってきたわけで、エフィッシモはその急所を衝いたのである。

 結果、新立川航空機と立飛企業は自らの非を認めざるを得なくなり、10年10月に是正措置を約束する。そして1年後、MBO(経営陣による自社買収)を実施、それによってエフィッシモはまたもや売り抜けに成功したのである。売却益は約68億円に上った。

 その後もエフィッシモは日産車体やテーオーシー、オービックをめぐり裁判を仕掛けている。ただそうした公然活動は14年5月のオービック経営陣に対する株主代表訴訟を最後にぱったりと止んでいた。その沈黙を破り久々に強硬手段に打って出たのが冒頭のユーシンだったというわけである。

 ユーシンは30年以上にわたり最高権力者の座にある田邊氏の専横ぶりが目に付くようになっていた。海外進出で業容を拡大した功績があった一方、公募による後継社長の指名を撤回するゴタゴタがあった挙げ句、10億円を超す高額報酬を得ていたのである。

焦土作戦

 ところがエフィッシモの大量保有報告書公表の約30分前、当のユーシンは思わぬ発表を行っていた。買収した海外事業で多額の特別損失が発生し、16年11月期が100億円近い最終赤字に陥る見通しとなったというのだ。さらにそのことが財務制限条項に抵触、銀行団の圧力もあり、権力を欲しいままにしていたはずの田邊氏があっけなく辞任し、会社から去ることになったのである。

 劇的な効果を狙ってタイミングを見計らい大量保有報告書を提出したエフィッシモにしてみたら、宣戦布告を突き付けた相手が突然いなくなってしまったわけで出鼻を挫かれたことこの上ない。しかも、突然の赤字転落により純資産は4分の1近くも一気に毀損されてしまい、投資の前提条件である株価の割安感もかなり薄れてしまった。

高橋篤史/ジャーナリスト

高橋篤史/ジャーナリスト

1968年生まれ。日刊工業新聞社、東洋経済新報社を経て2009年からフリーランスのジャーナリスト。著書に、新潮ドキュメント賞候補となった『凋落 木村剛と大島健伸』(東洋経済新報社)や『創価学会秘史』(講談社)などがある。

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