
2月3日の節分を前に、コンビニエンスストアなどでは恵方巻きが売り出されているが、一方で「販売ノルマ」に対して悲鳴が上がっている。インターネット上には、店員たちの「今年もノルマ30本」「ノルマ達成できそうにない」「誰か予約して……」といった言葉が並んでいるのだ。
実際、いわゆる「ブラックバイト」の相談を受けているブラックバイトユニオンには、アルバイト店員からの販売ノルマや自腹購入に関する相談が多く寄せられており、ノルマ未達分の数万円を給料から天引きされたり、自ら買い取ったりするケースもあるという。
流通ジャーナリストの法理健氏は、「コンビニは、人口減少と出店加速で既存店の来店客数が減っています。そのため、『待ち』の商売から『攻め』の商売に移行せざるを得ない局面にきており、その象徴が恵方巻きなどの予約商材です」と語る。
「クリスマスケーキ、おせち料理、年賀状、お中元・お歳暮、 母の日……というふうに、20年ほど前から個店別の販売競争はありましたが、そこに数年前から恵方巻きが加わりました。もともと、コンビニやスーパーにとって、2月は売り上げが落ちる時期です。日数自体が少ない上、3~4月のシーズン商品や新商品の発売前で、小売業は全体的に盛り上がりに欠ける。そのため、各社は恵方巻きを大々的に売り出しているわけです。
しかし、恵方巻きは予約商材のなかでも商品単価が低く、予約活動の効率が悪いといわれています。一方、単価が安いためにバイトなどにノルマが課されやすい側面もあります。そして、予約が埋まらなかった店では店頭販売されることもあるため、節分の日には売り場に恵方巻きがあふれるコンビニが散見されることになるのです」(法理氏)
日本フランチャイズチェーン協会が1月に発表したデータ(既存店ベース)によると、2016年のコンビニ来店客数は前年比0.5%減の159億715万人。しかしながら、客1人当たりの平均購入額は同0.9%増の605.6円となっており、豊富な品揃えや予約商材に代表される消費喚起で補完している状況だ。
「ケーキの予約2000個」「おせち6個買った」
「コンビニのスーパーバイザー(SV)やマネージャーは、担当エリアの予約商材の売り上げが昇給や出世に直結することが多いです。前年比の数字や売上高は、競合店や地域環境などの諸条件によっても左右されますが、予約商材の売れ行きであれば『努力次第』であり、公平な判断材料となるからです。
ある地方都市のコンビニでは、オーナーががんばって『クリスマスケーキの予約を2000個獲得した』という例もありました。本部が押し付けているという側面もありますが、コンビニは立地産業なので、たとえば近くに競合店ができて売り上げが下がれば、生き残るためには予約商材に力を入れて売り込むしかありません。
また、予約商材の販売ノルマを達成するために、バイトだけでなくSVなどが自腹購入することもあります。『上司が怖くて、おせちを 6個買った』という独身男性のケースもあるほどです。また、母の日のプレゼントでは、『不在配送の客の半分ぐらいは、当日働いていたSVだった』という話もあります」(同)