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交通量の多い地域の住民、高い認知症発生率…大気中の汚染物が脳内に侵入か

文=水守啓/サイエンスライター
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交通量の多い地域の住民、高い認知症発生率…大気中の汚染物が脳内に侵入かの画像1「Thinkstock」より

交通量認知症

 筆者は千葉県房総半島の山の中で暮らしているが、ときどき自動車で東京湾を横切る高速道路アクアラインを通って都会に入る。湿度の低い冬は、白い雪を頂いた美しい富士山を海上から眺めることができる。だが同時に、海の向こうに見える東京・神奈川の景色は、スモッグに覆われた都会である。かつてほどではないものの、空気は汚染されている。ひとたびその環境に浸かってしまえばすぐに慣れてしまうが、都会では路上をたくさんの自動車が行き交い、騒がしい。そして、聞こえる音は、人工的なものが多く、鳥や虫の鳴き声は極めて少なくなる。

 つい先日、カナダのパブリック・ヘルス・オンタリオ(PHO)とインスティテュート・フォー・クリニカル・イバリュエイティブ・サイエンス(ICES)は、医学雑誌「ランセット」を通じて交通量の多い環境が我々の健康を脅かしているという興味深い報告を行った。研究者らは2001年から12年にかけて、20歳から85歳のオンタリオ州の住民660万人以上を調査した結果、交通量の多い道路から50メートル以内で暮らす人々は、300メートル以上離れて暮らす人々よりも7%高く認知症にかかる傾向がみられることがわかったという。

 調査によると、科学者らはオンタリオ州で認知症を24万3611件、パーキンソン病を3万1577件、多発性硬化症を9247件確認した。そして、認知症に関しては、交通量の多い環境条件との相関性を見いだすことになった。ただし、パーキンソン病と多発性硬化症に関して有意性は認められなかった。

 論文の執筆者でPHOのレイ・コープス博士によると、その結果は、多大な交通量によって生じる汚染物質が認知症と関連していることを示唆している。つまり、大気に放出された汚染物質が血流を通じて脳内に侵入し、神経性の問題につながり得ることを示唆するとしている。

 同じく、PHOの科学者ホン・チェン氏も言う。

「交通量の多い道路は、認知症の発病を高める環境ストレスの源になり得る。人口増と都市化によってますます多くの人々が激しい交通量に接し、道路に近づくだけでも身体に負担を掛け、認知症の発症率を高めている」

都会と田舎の環境ストレス

 もちろん、認知症の原因は単純なものではなく、大気汚染だけがそれを促しているわけではないだろう。たとえば、交通量の多い道路沿いには商業施設も多く、自動車以外の要素も加わった騒音も存在する。我々が耳では聞き取れない周波数帯の音や振動も発生する。それらが、近隣住民に自覚されることなくストレスを与えている可能性も考えられる。

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