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筈井利人「一刀両断エコノミクス」

そもそも原発が完全民間なら、危険な運営や国民への高負担ツケ回しも起こらないのは自明

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 しかし政府と民間企業には大きな違いがある。民間企業は甘い見通しがもたらした結果を自分で引き受けなければならない。東芝の場合、巨額損失で債務超過に陥る恐れも取り沙汰される。それを避けるため資本を増強するには、増資、事業切り売り、金融機関の支援などの手段があるが、いずれも簡単ではない。金融機関に支援してもらうため、一段の合理化を迫られる可能性もある。
 
 これに対し、政府は見通しが甘くてもほとんど痛みを感じない。原発事故の事故処理費など経費が当初計画を大きく上回っても、電気料金の上乗せや増税で賄えばよい。政府の無駄な事業を中止するなど合理化を迫られる心配もまずない。誤った判断をした政治家や官僚の責任も問われない。これではコストの算定にあたり、経済合理性を無視した希望的観測がまかり通るのも当然だ。

 エネルギー問題は市場に任せよという主張には反対も強いだろう。特に原発のように高度な科学技術に基づく事業は、短期の利益を追求する民間企業には無理で、政府でなければ担えないという意見をよく耳にする。

原発問題の真の解決

 しかし、それは思い込みにすぎない。第二次世界大戦が始まる以前、初期の原子力研究の大半は政府の予算に頼らず、民間財団や大学の資金で賄われていた。

 たとえば「原子物理学の父」と呼ばれ、1908年にノーベル化学賞を受賞したアーネスト・ラザフォードが研究に携わったのは、英国のマンチェスター大学。現在は他の大学と統合して国立大学となったが、もとは19世紀半ば、地元の繊維商ら実業家の寄付により設立された。マンチェスターは産業革命後、綿織物工業の中心地として発展した商工業都市として名高い。

 ラザフォードに学び、量子力学を確立したニールス・ボーアが母国デンマークに設立した研究機関、ニールス・ボーア研究所は、1920~30年代に原子物理学研究の中心地となる。この研究所の財政を支えたのも、ビール醸造大手カールスバーグの財団を中心とする民間の資金である。

 一方、40年代になると第二次大戦に伴い米国やドイツの政府が原爆開発に乗り出し、研究資金が政府予算で賄われるようになる。しかしこれは原子力の平和利用研究をかえって妨げた。厳しい秘密主義により、研究者間の自由な情報交換が規制されたためだ。

 原子力研究に対する政府の介入は、科学全般にも悪影響をもたらす。米政府は戦後も原子力に過剰な期待を抱き、他分野の研究者や技術者まで動員したため、それらの分野で人材不足を招いた。

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