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江川紹子の「事件ウオッチ」第72回

【MX「ニュース女子」問題】で謝罪した東京新聞 曖昧な反省ではなく事実の検証を

文=江川紹子/ジャーナリスト
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 番組で現地レポート役を務めた軍事ジャーナリストの井上和彦氏は、「過激派」「過激」「テロリスト」などの言葉を連発。テロップやナレーションでも「過激派デモの武闘派集団」などと、基地建設反対派が凶暴な集団であるかのように印象づけた。

 ところが、あきれたことに井上氏は、わざわざスタッフと共に沖縄に取材に行きながら、高江ヘリパッドの建設に反対する人々が座り込む現場には行っていない。45キロも離れたトンネルの手前で、「この先は過激なデモで危険なため、ロケ中止の要請があった」などと真偽不明の言い訳をして引き返してしまったのだ。

 私も先日、現地を訪ねてみたが、このトンネルから現地までは1時間近くかかり、途中に地元の特産品の直売所などの観光施設もある。それに、当時は工事現場のゲート前に多くの警察官もいた。取材のクルーが、基地建設に反対する人たちに襲撃された例は報告されていない。

 井上氏らは、自分たちが勝手につくった凶暴イメージに怯え、しっぽを巻いて帰ってしまったのか。それとも、映像から「過激派」とは異なる印象が視聴者に伝わってしまうのを避けるために、わざと現場を避けたのか。いずれにしても、現場に行かず、反対者の話は取材せず、事実の確認もしないまま、風説を交えて基地建設反対派の“危険性”“凶暴性”を視聴者に印象づける演出に終始した。

 過激さを示す事実として、反対派が勝手に道路を封鎖して救急車まで止めたという“証言”も紹介されたが、これはさまざまなメディアの取材で、事実でないことが明らかになっている。

 スタジオでは、井上レポートを基に、反対派は過激で暴力的なデモを行っているという前提でトークが行われ、「こんなこと乱暴なヤクザでもやらない」(ジャーナリストの須田慎一郎氏)、「こういう無法地帯に3000億円の沖縄振興費がまかれている」(元官僚の岸博幸氏)などと、基地建設に反対する人たちを非難するコメントが展開された。その一方で、基地建設の必要性などはまったく議論されていない。

 東京MXテレビは、「さまざまなメディアの沖縄基地問題をめぐる議論の一環として放送致しました」との見解を発表したが、結局のところ、この番組が行ったのは、事実に基づく議論ではなく、事実をないがしろにして基地建設に抵抗する人たちを貶める印象操作にすぎない。つまりは、虚実とりまぜて政府の政策に反対する人々について悪印象を流布する、一方的なプロパガンダである。

 それに加担したことについて、ジャーナリストたる長谷川氏は今、どう考えているのだろうか。まずは、ここを知りたい。

 ほとんどが反対派を非難・罵倒する言葉で埋め尽くされた番組だったが、その途中に、タレントの八田亜矢子さんから「(沖縄県民の)大多数は(ヘリパッド建設を)どう考えているのか」という大事な質問も出た。日頃政治に関してさまざまなメディアで発信をしている長谷川氏は、ここで選挙結果など現実を踏まえた発言をして然るべきところだ。司会者としても、議論を展開していい場面だろう。

 ところが番組では、現場の取材さえしていない井上氏が「大多数(から)は、米軍反対なんて聞かないですよ」と、根拠不明な答えをしただけで、その話題は終わってしまった。長谷川氏は事実に基づいた見解を語ったり、スタジオでの議論を展開したのに、編集でカットされてしまったのか。それとも、何も言わず井上発言を許容してしまったのか。ここも知りたいところだ。

東京新聞が反省・検証すべきことは

 謝罪文が掲載された以降の東京新聞を読んでいても、そうした点についての長谷川氏の見解は、まるで出てこない。

 私は、東京新聞が「反省」すべきは、「他メディアで起きたこと」についてではなく、番組が放送された後の、このような同紙の報道にあるのではないかと思う。

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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