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中沢光昭「路地裏の経営雑学」

自分の子供が「潰れて」しまわないための受験校選びの方法…偏差値&校風偏重のワナ

文=中沢光昭/経営コンサルタント
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自分の子供が「潰れて」しまわないための受験校選びの方法…偏差値&校風偏重のワナの画像1「Thinkstock」より

 2月といえば中高一貫教育を中心とした私立中学校受験の季節です。小学6年生は受験本番を迎え、小学4、5年生の子を持つ親は、どこの塾に入れようか、どこの学校に入れたいかを思案する季節です。少子化が進んでいる一方で中学受験の熱は沈静化する傾向はまったく見えず、それをテーマにしたドラマも放映されています。実は筆者自身も中学受験を経験し、自身の子供も中学受験をしました。

 一人の親として悩むことは尽きることなく、子供に勉強を好きになってもらうコツ、成績を伸ばすコツ、もっと根本に立ち返って生きる力を付けるためのコツなど、世に書籍が溢れていますので、ご多分に漏れずたくさん読みました。

 そうしたなかでも、志望校をどこにするかという問題については、各々の成績の状況や親や本人の価値観があまりにも絡んでしまい普遍的なポイントを抽出しにくいからか、あまり書籍が出ていなかったり、雑誌で紹介されていても一部の学校の新しい取り組みをアピールする程度です。

 そこで今回は、これから子供に中学受験をさせたいと考えている親を対象に、志望校選びについて考えてみたいと思います。筆者は教育関係者ではないので、あくまでも子供と親と両方を体験した一個人からの観点になってしまうことをご了承ください。

学校の良し悪しは「わからない」

 志望校を選ぶ際、良い大学に行ってほしいという点については、偏差値や卒業後の進学実績データを見るのが一般的です。数字に表れているので非常に把握しやすいでしょう。

 一方で、どんな人間に育ってほしいのかという点については、非常に難しいところです。その学校の教育についてのスタンスや校風を知り、自分の子供の性格とフィットしているか、あるいは自分の子供にどんな大人になってほしいかということを考えるのが基本となります。それはそうだが、校風についていえば、その影響力はあってないような部分もあります。毎年有名大学に何人も進学しているような進学校であっても、立派に社会で成功している誇らしい卒業生も出れば、犯罪を犯してしまう卒業生も出るように、どんな人間に育つのかということについて学校が与えられる影響には限度があるのでしょう。ですので、「あの学校は自由な校風だから」「校長先生が厳格な考えを持っているから」などという点は、重要であっても、そこまで子供への影響力は強くないように思います。

ランク付けの負の側面

 あまり話題になっていませんが、一部進学校において独自に存在する仕組みとして、成績別のクラス分けがあります。すべての進学校が導入しているわけではありませんし、絶対的な良し悪しはありません。ただし、子供との相性の問題を考えなければならないとは思います。

 どの学校に行こうとも、中学受験合格して入学している時点で、勉強に対して誰しもある程度の自負を持っています。もちろん初めの数年は部活や友人たちとの楽しい時間を過ごすので、そんなことは忘れています。

 ところが大学受験を意識し始める頃になって、小学校のときに通っていた塾以来久しぶりにランキングを付けられて、それに基づいたクラスが編成されます。ここで人によっては突然下位クラスになった事実に対して、一般的な水準からは偏差値も高く、本人もそう思ってきたのに、いきなり「あなたは劣っています」と言われたように受け止めて、過剰な劣等感を味わってしまいます。

 本人もそれまでに薄々感じてはいますが、学校からオフィシャルに伝えられるのは、また一段とショッキングなものです。具体的にどう感じたかはもう忘れてしまいましたが、実は筆者自身がそうでした。そこからなかなか立ち直れない人も出てきます。もちろん「そんなことよりもっと辛いことは社会に出ればたくさんあるのだから、それくらいでくじけてはダメだ」という理屈も真なりですが、10代中盤でその局面を迎えた場合に、心のどこかで引きずってしまう人が出てしまいます。

 年単位、場合によっては卒業するまで成績のランキングが固定化されるために、そこからがんばってもなかなか環境が変わりにくいのです。そのなかで不断の努力を続けなければならないというプレッシャーが発生します。

 自我もだいぶ確立されてきて、思春期であることも影響するのでしょう。教育のおかげで年齢に比して色々と考える力は付いてきているために、くよくよと考えてしまう子もいるでしょう。

 下位にランクされたことで発奮してがんばる生徒もたくさんおり、逆に成績上位に位置づけられた生徒にとっては、モチベーション向上にもつながるので、学校側としてはメリットを認識してこうした仕組みを採用しているのでしょう。ちなみに、下位に位置づけられた生徒のその後の人生を考えて、成績別クラスの仕組みを廃止した学校もあるようです。その学校は、それだけが理由ではないにせよ、結果的に進学実績は伸びていったという情報もあります。

 また、超難関校といわれる学校においては、その仕組みが採用されていない学校もあるようです。それは恐らく放任しておいても自分のペースできちんと勉強して結果を出す生徒ばかりなので、学校としても心配する必要がないからでしょう。

我が子の性格と、「親は何ができそうか」を想像する

 筆者が申し上げたいことは、成績別クラス分けの仕組みの是非ではありません。それは誰にもわからないと思います。半面、その仕組みと自分の子供との相性については、親として考えてあげたほうがよい点だと捉えています。

 成長期ですので、入学時の成績の相対的な良し悪しは、1、2年もすればほとんど関係なくなっていきます。ですので、自分の子供が入った中学・高校で、数年後に上位に入る可能性もあれば下位に入る可能性もあり、どうなるかは予測できません。

 10~12年間育ててきて、我が子についてはわからない部分もあればわかる部分もあるとは思います。限界はあれど、我が子が将来的にもしショッキングな状況に置かれたときに、発奮してがんばれるタイプなのか、あるいは引きずってしまうタイプなのか。親のフォローでそれは解消できそうか。また逆に、自分の子供はそうしたランク付けの仕組みがないと発奮しないタイプだからそうした環境に置くべきと捉えるなど、さまざまな点から考えて、そうした仕組みがある学校、またはない学校を志望するということも、一つのポイントかと思います。
(文=中沢光昭/経営コンサルタント)

中沢光昭/株式会社リヴァイタライゼーション代表

中沢光昭/株式会社リヴァイタライゼーション代表

企業再生コンサルタント兼プロ経営者。
東京大学大学院工学研究科を修了後、経営コンサルティング会社、投資ファンドで落下傘経営者としての企業再生に従事したのち、上場企業子会社代表を経て独立。雇われ経営者としてのべ15期以上全うし、業績を悪化させたのは1期のみ。
事業承継問題を抱えた事業会社を譲受け保有しつつ、企業再生とM&Aをメインとしたコンサルティングおよび課題内容・必要に応じて半常勤による直接運営・雇われ経営者も行う。シードステージのベンチャー企業への出資も行う。
株式会社リヴァイタライゼーション 代表・中沢光昭のプロフィール

Twitter:@mitsu_nakazawa

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