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JTは3兆円の巨額買収で「のれん代」が重荷になっている。それでも2強に対抗するためには次の大型のM&Aを仕掛けなければならない。考えられるのは、世界4位の英インペリアル・ブランズの買収であるが、それには独占禁止法の壁がある。ギャラハーを傘下に持つJTは、インペリアル・ブランズを合併すると英国たばこ市場でのシェアが8割を超えてしまう。独占禁止法の絡みもあって、新たな大型案件は見つけにくいのが実情だ。
JTは新興国・発展途上国に活路を求める
JTは発展途上国をターゲットに考えている。16年、500億円を投じエチオピアのたばこ専売会社の株式を40%取得した。それ以前にも、11年にスーダンのたばこ会社を350億円で買収した。いずれも“落ち穂拾い”だ。
東南アジアの需要はかなり見込めると計算している。日本のたばこは、アジアではブランド力がある。「キャビン」の生産をやめて「ウィンストン」に統一するなど、ブランド力の強化でアジア市場を攻めようとしている。
もうひとつ、新たな成長領域として有望視されているのが、灰と煙が出ない加熱式たばこだ。紙巻きたばこに比べてタールが少ないことが人気となり、世界首位のフィリップ・モリスの「アイコス」が市場をほぼ独占している。
JTは加熱式たばこでも出遅れが否めない。「プルーム・テック」を現在は福岡市とインターネットのみで限定販売しているが、6月以降、東京都内の一部で販売する。年内に都内全域に広げ、18年上半期には全国展開を考えている。供給体制を整えるため、静岡県の工場に500億円の投資をする。問題は価格をどこまで下げられるかだ。
M&Aと加熱式たばこの2本柱がうまくいかないと、JTの前途は厳しい。株価は2月7日に3607円の昨年来安値をつけ、反転の兆しはない。
会長のポストは財務事務次官OBの指定席だ。現在の会長は14年6月にその椅子に座った丹呉泰健氏。元財務事務次官の勝栄二郎氏が、インターネットイニシアティブの社長を辞任してJT会長になるのではないかとの観測がある。
(文=編集部)