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【原発避難いじめ】横浜市教育委、加害児童に直接調査せずいじめ不認定…自己保身優先

文=森井隆二郎/A4studio

 また、いじめの加害児童は『誰からいくらお金をもらった』というようなことを仲間に話しているケースが意外と多いため、噂がクラスに回っているとも考えられます。特に今回の事件は、小学2年生から6年生まで継続していたいじめですので、周囲の児童たちが情報を持っていないはずがありません」(同)

第三者委員会は“調査の限界”を自ら狭めた?

 では、なぜ第三者委員会は加害児童やクラスメイトたちへの聞き取り及びアンケート調査を見送ったのだろうか。

 報告書には、その理由として、「調査開始時期(2016年1月)が当該児童及び加害を疑われる児童が小学校6年生の3学期で、小学校の卒業及び中学校の進学を控え、情緒的に不安定になりやすい時期であることを配慮し、当該児童及びその保護者からの聴取を最優先とした」とある。

「これは第三者委員会の言い訳に感じられます。報告書には、

『至近の1年余り(小学5年生だった2014年6月から卒業まで)、当該児童は不登校状態となっており、加害を疑われる児童との接触はなく、在籍小学校の教員との接触もない状況から当該児童の学年を対象としたアンケート調査等は正確なデータが得られる保証がないために行わないこととした』

 とも書かれていますが、むしろ加害児童やクラスメイトたちが卒業する3月までは、なんとか調査のやりようがあったのではないでしょうか。

 小学校を卒業すると、同じ公立中学校に進むとしてもクラスがバラバラになり、そこにはほかの小学校から来た児童たちもいます。ここで調査しようとすれば『あの学校出身の子たち、何か聞き取りされているな』『あの子たちがいじめていたのではないか』といった疑惑が持ち上がってしまい、中学校での新生活に差し障ると懸念されます。

 結局、学校も第三者委員会も、事実調査にそれほど重きを置いていないのです。

『教育上必要なことは、“真実の解明”ではなく、事態が起こった状況を詳細に理解し、そのことが教育上問題であるとすれば適切な指導を行うことである』

と報告書に書かれていますが、私からすると、事実調査をもとにしなければ指導も何もできないのではないかと思います」(同)

いじめ不認定の意味は、単に冤罪を生まないための配慮だけではない?

 また、「第三者委員会の結論は第三者委員会の結論ですから、それを覆すことなんてできない」「あれだけ厳しい第三者委員会が出した結論を、そんなに簡単に覆すことは難しい」という旨を岡田氏が語っていたことに対し武田氏は、次のように続ける。

「現状では、いくら被害児童が『お金を脅し取られた』と証言したところで加害児童たちからは一度も『お金を取った』という話が出てきておらず、しかも物的証拠は先生が聞き取りをしてまとめた書類のみ。第三者委員会としては、冤罪を生まないために、これをいじめや恐喝と認定するわけにはいかなかったのでしょう。

 とはいえ、岡田氏は、第三者委員会を都合よく利用しているという印象が拭えません。メディア向けに最初に配られた資料には結論部分だけが書かれており、第三者委員会がどのような調査をしたかという説明はごっそり抜けています。それで、いざ第三者委員会の報告書に目を通してみれば、

『せめて、1年前に調査に入ることができれば、詳細に実態を把握し解明にもより正確さのある調査が可能であった』

と、自分たちの限界が冒頭からはっきり記載されているのです。岡田氏の立場でしたら、第三者委員会の調査内容はすべて知り尽くしており、決して充分な調査ではなかったことも理解しているはずです。それなのに口頭では『あれだけ厳しい第三者委員会が……』と評価するような言葉を残していますし、資料の配り方も含め、岡田氏には、なんらかの意図があったのではないでしょうか」(同)

 こう考えると、横浜市教育委員会は第三者委員会を隠れ蓑に、自己保身へ走ろうとしたとも受け取れる。いじめや恐喝を認定したことで仮に冤罪を招いてしまえば、加害児童や保護者たちからの追及は免れないだろう。

 万が一、いじめや恐喝を認定した後に、本当は“いじめはなかった”という事実が出てきてしまうと、加害児童の保護者たちから「うちの子どもの人生が狂わされた」などと糾弾され、責任問題に発展してやっかいなことになる――そう考え、加害児童寄りの調査結果になったのではないかという批判もある。

 最後に、この事件は今後、どういった展開を辿る可能性があるか、武田氏に聞いた。

「場合によっては民事裁判になるでしょう。05年から06年にかけ、似たようないじめ・恐喝事件が神戸市の小学校で発生しています。このとき、恐喝の金額については、被害児童と加害児童たちの証言とでかなりの差が開いていました。被害児童は『1000円札や500円玉をいつ、何枚渡した』といった情報を、事細かに覚えていたのです。

 一方、お金を取った側はもともと自分のお金ではなく、ましてや苦労をして得たお金でもないので、記憶が非常に曖昧でした。この事例では被害児童の証言のほうが正しいだろうと認定され、民事裁判で勝訴しています。

 民事裁判以外ですと、新しい調査委員会を立ち上げ、児童たちにもう一度聞き取りやアンケート調査をするという方法もあるのではないでしょうか。ただ、事件の発生から時間が経ち、すでに多くの報道がなされているなかでは、再調査はより困難なものになっているとも予想されます」(同)

 最優先事項は被害児童のケアだが、それと並行し、学校及び第三者委員会が担ってきた調査の妥当性や、横浜市教育委員会の思惑を浮き彫りにする必要がある。そのためには、これまで以上に徹底した検証が求められるだろう。
(文=森井隆二郎/A4studio)

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