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牧野知弘「ニッポンの不動産の難点」

99%の人々から搾取するディズニー型ビジネス=夢が醒めた後…日本の絶望と階級闘争

文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役

 当時は「財産」だとして一般庶民が膨大な金額のローンを組んで買った郊外などの住宅の多くは、価格が回復することなく、下落を続けて現在に至っている。さらにこれらの住宅は、子供や孫に住宅を継ぐ意思はなく、所有は「一代限り」となり、「売れない」「貸せない」「誰も住む予定がない」といった三重苦の不動産に成り下がっている。これを「財産」として一生懸命ローン返済をしてきたことは皮肉としかいいようのないものだ。

 一方で、不動産を金融商品化することで他の不動産と「差別化」して投資マネーを呼び込むことで、新たなマーケットをつくろうとする動きもこの頃から始まった。実態はともあれ、投資マネーという「思惑」で動くマネーを不動産に持ち込んだことは、不動産に投資家が認定する優良な資産というお墨付き=「質的充足」を意味するスパイスをかけることに成功したのだ。結果として都心部で金融とつながった不動産は、大いにその価値を上げることになった。

ディズニー型ビジネスモデル

 この実需に頼らず「質的充足」を目指すビジネスモデルは、実はディズニーランドのビジネスモデルに通じている。ディズニーランドは83年に千葉県の舞浜にオープン、以降多くの人々にディズニーという「夢と魔法の国=バーチャル」な空間を提供することで成功を収めてきた。ディズニーランドはマクドナルドと異なり、人々の空腹を満たすものではない。夢と魔法という「質的充足」を満たすのが彼らのビジネスモデルだ。

 したがってディズニーは83年の日本上陸以来、舞浜から一歩も外に出ることはない、つまり「量的な拡大」を追求せずに、リアルなミッキーとミニーが見たければ舞浜に来い、という頑ななまでのビジネススタイルで、ディズニーランドというハコの中身(ソフトウェア・コンテンツ)を磨き続けてきた。

 すでに「量的充足」の使命を終えた不動産は、金融商品として、バーチャルな価値を施した不動産マーケットに活路を見いだし、また自らのハコから常に情報発信を続けて人を集める、ホテルやリゾート、アウトレット、テーマパークなどのディズニー型ビジネスモデルに重心を移し始めている。

 人々も自らが不動産を「所有」するのではなく、「利用」することの価値に対しておカネを払うようになったといい換えてもよいかもしれない。

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

オラガ総研代表取締役。金融・経営コンサルティング、不動産運用から証券化まで、幅広いキャリアを持つ。 また、三井ガーデンホテルにおいてホテルの企画・運営にも関わり、経営改善、リノベーション事業、コスト削減等を実践。ホテル事業を不動産運用の一環と位置付け、「不動産の中で最も運用の難しい事業のひとつ」であるホテル事業を、その根本から見直し、複眼的視点でクライアントの悩みに応える。
オラガ総研株式会社

『2040年全ビジネスモデル消滅』 第1章 マクドナルドが目指した「量的充足」社会の実現―一九七一年からの四半世紀を展望 第2章 ディズニーランドがこだわる「質的充足」ビジネスの展開―日本の絶頂期八〇年代にやってきたディズニーランド 第3章 マクドナルドはなぜ行き詰ったのか―九六年以降の日本社会の変質 第4章 ディズニーランドはなぜ三年連続で値上げできるのか―社会の変質の先にあったディズニーランド型価値観の創出 第5章 マクドナルド型ビジネスモデルに見る今後の価値下落―二〇二一年以降の社会の展望 第6章 ディズニー型ビジネスモデルによる価値創造―二〇二一年以降の不動産価値 第7章 ディズニーの夢から醒めたとき―二〇四六年に向けてのクライシス amazon_associate_logo.jpg

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