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仏国でも「まさかの極右大統領」当選で仏国第一主義も…各国が自国第一、世界分断で混沌

文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授

 ルペン氏は、反グローバル化への取り組みを進め、憲法に自国第一を明記するとさえ表明している。多くの国民が、移民や難民の流入によって雇用機会が奪われたという反感、テロの発生など治安が悪化しているという懸念を抱いている。そうした民衆心理にとって、ルペン氏の主張は既存の政治家がなしえなかった、民衆目線の政治が進むとの期待を抱かせる可能性がある。米国の大統領選挙でも、予想以上に多くの国民がグローバル化の進展に反感を持っていたことがはっきりした。

 もし、フランスが自国優先を目指す政治を選択するなら、欧州各国にもかなりの影響が出るはずだ。ドイツでも反移民を訴える「ドイツのための選択肢(AfD)」が一定の支持を集めている。イタリア、ギリシャなど南欧諸国では、景気が思うように回復せず、銀行システムや財政再建への不安も高まりやすい。状況次第で自国の決定権を取り戻そうとする動きが進み、欧州全体の政治連携が後退する可能性には注意が必要だ。

政治リスクを“想定外”とすべきではない

 従来、金融市場では主要国の政治はグローバル化や自由貿易を重視し、極端なポピュリズム政治は進まないとの考えが多かった。政治混乱は、発生する確率がかなり低い想定外の事象(ブラックスワン)だった。しかし、近年の主要国の政治では、ありえないと思われていたことが現実になることが増えている。ポピュリズム政治の蔓延は、想定外ではなく、投資家が念頭に置いておくべきリスク要因(グレイスワン)と考えるべきだ。

 欧州の国債市場を見ていると、フランスの金利上昇が顕著だ。昨年9月末、フランスの30年金利は0.9%台で推移していた。米国大統領選挙後の上昇局面を経て、現在、30年の金利は2.1%台に達している。投資家は、実際にルペン氏が当選し、フランス経済の立て直しのために財政出動が進む展開を意識し始めたようだ。

 フランス大統領選挙への懸念は、為替相場にも影響を与えている。トランプ政権の対外強硬策などへの懸念からドルが主要通貨に対して下落するなか、ユーロも売られる場面が増えている。そして、ルペン氏が大統領に当選すれば、為替レートは1ユーロ=1.00ドルのパリティを下回り、1ユーロ=0.9ドル台に突入するとの見方も出始めた。

 どのようなペースでフランスの金利上昇、ユーロの下落が進むか、不透明な部分は多い。それでも、トレンドとしてフランス国債、ユーロは下落基調で推移する可能性が高まっている。それが含意するものは、一般的に言われている以上に、ルペン氏が大統領に当選する可能性があり、それは無視できるものではないということだ。そうしたリスクを金融緩和で抑えることも難しい。

 英国国民投票、米国大統領選挙にみられた通り、ポピュリズム政治の進行はリーマンショック後の低迷を招いたエリート政治への反発でもある。それだけに、自国のことだけを考えればよいという、従来と異なる主張が注目を集めやすい。そして、注目が集まると票が流れやすい。フランス大統領選挙がどうなるかは結果を見なければわからないが、ルペン氏当選のシナリオはないと決め打ちすべきではない。
(文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授)

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