
これまで本連載では、明太子、たらこ、いくらなどの塩蔵魚卵および塩辛・練りウニが胃がんの発生リスクを高めることを述べてきましたが、実はもうひとつ、胃がんのリスクを高める食べ物があるのです。それは、漬け物です。
塩蔵魚卵や塩辛・練りウニが胃がんの発生率を高めることは、国立がん研究センター「がん予防・検診研究センター」(現・社会と健康研究センター)の津金昌一郎センター長らが、40~59歳の男性約2万人について、約10年間追跡した疫学調査でわかったものですが、この調査では漬け物と胃がんとの関係についても調べているのです。
漬け物を「ほとんど食べない」「週1~2日」「週3~4日」「ほとんど毎日」に分類して、それぞれのグループの胃がんの発生率を比較しました。その結果、「ほとんど食べない」の胃がん発生率を1とすると、「週1~2日」が1.54倍、「週3~4日」が2.71倍と発生率が高くなっていました。しかし、「ほとんど毎日」は2.35倍と、「週3~4日」より低くなっていました。これはどうしてなのか、考えてみましょう。
塩蔵魚卵と胃がんとの関係の調査でも、「ほとんど食べない」「週1~2日」「週3~4日」「ほとんど毎日」に分類して胃がんの発生率を調べましたが、「ほとんど食べない」の胃がん発生率を1とすると、「週1~2日」が1.58倍、「週3~4日」が2.18倍、「ほとんど毎日」は2.44倍に達していました。
また、塩辛・練りウニと胃がん発生率との関係では、「ほとんど食べない」を1とすると、「週1~2日」が1.47倍、「週3~4日」が1.75倍、「ほとんど毎日」が3.12倍となっていました。
つまり、塩蔵魚卵も塩辛・練りウニも、たくさん食べている人ほど胃がんの発生率が高くなるという比例関係になっているのです。これは、塩蔵魚卵および塩辛・練りウニが胃がんの発生率を高めていることは間違いないということです。しかし、漬け物の場合、比例関係になっていないことから、漬け物が胃がんの発生率を高めているとは結論付けられません。
胃がんの原因となる物質は何か
明太子やたらこ、いくらには、製品が黒っぽく変色するのを防ぐ目的で、発色剤の亜硝酸Na(ナトリウム)が添加されています。亜硝酸Naは、魚卵に特に多く含まれるアミンという物質と反応して、ニトロソアミン類という発がん性物質に変化します。それが胃の粘膜に作用して、細胞をがん化させていると考えられます。