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山田修「間違いだらけのビジネス戦略」

出光、創業家からの「独善的」手紙公開で完全排除へ…合併阻止狙う創業家の不合理な主張

文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント
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 その手紙で創業家側は、2つの点を指摘している。合併後、創業家の持ち株比率が相対的に下がるので、拒否権を行使できなくなる恐れがある、つまりオーナーシップが犯されること。そしてもう一つは、創業家から取締役の派遣を要望しているという点だ。

 非公開が要請されたこの書状は、昭介氏の本音に近いとみることができる。つまり利得的であり防衛的であり、当たり前の動きだ。「挨拶がない」ということでの不快感から始まった争いの落としどころとして、創業家が示した要点ではないか。これを受け止めなかったのは、現経営陣としては創業家の経営関与を、合併を機会に将来にわたって排除したい、という判断があったのだろう。資本家である創業家と雇われ経営者側とで接点が生まれるべくもない、両者の異なる志向だ。

トランプ大統領と出光昭介氏:民主主義と株主資本主義

 浜田弁護士の代理人辞任という事態で、私はトランプ米大統領を想起した。大統領に着任して、メキシコ国境での壁建設や7カ国からの入国制限など、次々と個性ある大統領令を発布し、強い反発を引き起こしている。不合理、不条理ともみえる決定は、それを発布できる権力に裏打ちされている。大統領選挙というアメリカの民主主義システムがそれを与えた。

 昭介「大統領」の場合は、株主資本主義というシステムから権力を与えられている。別の企業事例で見てみると、セブン&アイ・ホールディングスで創業家がどれだけの株を所有しているかというと、9.6%である。その持ち株分だけで、あの大経営者・鈴木敏文氏の詰め腹を切らせた。出光で昭介氏が掌握している株式は3分の1を超えている。昭介氏がまだ厳然として事実上のオーナーなのだ。

 昭介氏の行動は、出光経営陣の視点からは不合理、不条理とみえる。業界はまさに再編の波に洗われていて、JXホールディングスと東燃ゼネラル石油の統合会社、JXTGホールディングスが4月に発足する段階だ。出光・昭和シェル案件も待ったなしの状況で経営陣としては悲鳴をあげたいような段階となってきた。

 そんなビジネスの状況を、昭介氏は意に介さないように見える。そんな状況が想定される昭介氏を翻意させるには、下記のようなセットが一案となるのではないか。

1.昭和シェルとの合併後も創業家が3分の1以上の株式を握り続けられるスキーム
2.創業家からの経営関与(取締役の送り込み)
3.月岡社長の交代

 そして、本問題は創業家で代替わりが起こるまで動かない、というのが、あり得る成り行きの一つの極かもしれない。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)

※ 本連載記事が『間違いだらけのビジネス戦略』(クロスメディアパブリッシング/山田修)として発売中です。

出光、創業家からの「独善的」手紙公開で完全排除へ…合併阻止狙う創業家の不合理な主張の画像3撮影=キタムラサキコ
●山田修(やまだ・おさむ)
ビジネス評論家、経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導の第一人者。「戦略策定道場」として定評がある「リーダーズブートキャンプ」が2月から開講。公的助成金により参加費が無料となる(申請方法については問合せ)。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 「社会人勉強心得帖」』(プレジデント社)、『MBA社長の「ロジカル・マネジメント」-私の方法』(講談社)ほか多数。

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