事業の拡大に伴い、企業の社会的な責任は増す。韓国が、財閥の創業一族による企業支配を断ち、より透明かつ中長期の発展を重視した経営体制を整えることは不可欠だ。一方、韓国では為政者と財閥の癒着が続き、公平に富を分配する社会システムが整備されてこなかった。韓国政府は今回の教訓を生かし、財閥企業の解体を通した公正な競争環境の整備、教育の充実を通した基礎研究の推進などの“構造改革”を進めるべきだ。

 チェ・スンシル被告の国政介入、財閥企業からの不正な資金提供を教訓に、韓国全体が公明正大な政治、経済の運営に舵を切らない限り、先行き不透明感はさらに高まっていくだろう。

構造改革の推進には政治の役割が重要

 
 構造改革を進めるためには、政治の役割が重要だ。政治家が財閥と政権の癒着問題を直視し、内需拡大のために公正かつ中長期的な視点で構造改革の論点をまとめていくことが欠かせない。世論が財閥批判に向かうなか、こうした取り組みを冷静に進めることが大切だ。

 これまで、財閥経営者が賄賂などの疑いで逮捕されても、特別赦免(特赦)される例が続いてきた。この状況に対して多くの国民が、「財閥のお金と権力があれば罪も許される」と思っていることだろう。その点で、イ・ジェヨン副会長の逮捕以降、パク大統領だけでなく財閥企業への捜査がどう進むかは、韓国の民主主義の実力を測るバロメーターといえる。もし、捜査内容がうやむやになってしまうなら、本当に必要な改革が進むかは心もとない。

 パク大統領の弾劾を受けて、韓国では今年前半にも大統領選挙が実施される可能性がある。次期大統領を目指して複数の候補がそれぞれの政策を主張している。主な候補として、最大野党「共に民主党」のムン・ジェイン(文在寅)前代表、イ・ジェミョン(李在明)城南市長などの名前が伝えられている。

 候補者の主張には共通点がある。それは、失業者、高齢者などの社会的な弱者に対する給付を増やすということだ。これは、財閥に依存し、優遇してきた政治と決別し、従来の社会構造に不満を感じてきた有権者の支持を取り込もうとする考えだ。それは、目先の民衆の不満解消を訴えて支持を集めようとする“ポピュリズム政治”が進みやすいことを意味する。

 ポピュリズム政治が進むと政治は中長期的な視点で、必要な判断を下せなくなる可能性がある。一時的な失業などを伴う構造改革への反発は高まるだろう。時に、慰安婦問題のように、韓国の世論は感情的になりやすい。その点で、大統領選挙の争点が、財閥叩きに終わってしまうと、一時的には世論が高揚したものの、その後の閉塞感が高まり、経済が停滞するという展開も想定される。政治が中長期の視点で必要な取り組みを進めることができるかが、韓国経済の中長期的な安定には欠かせないだろう。
(文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授)

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