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ここが肝だよ! テレビCM戦略

制作費9千円の市職員「ガチ過ぎる」PR動画で納税額7倍…数百万かけ効果なし自治体も

文=鷹野義昭/CM戦略アナリスト・マーケティングディレクター

まさか本当に脱いでしまうとは……「インパクト」と「話題づくり」

 着ぐるみのキャラクターの中身がわかってしまうことは、もちろん通常の場合“禁じ手”です。

 地域のあの「ゆるキャラ」に、誰が入っているのだろうか。男なのか、女なのか。若い人なのか、ベテランの人なのか。アルバイトなのか、それとも自治体の職員なのか――。そんなことを誰しも思った経験があるのではないでしょうか。

 それらの答えは、PR動画を最後まで見てもらえば、笑いとともに腑に落ちることでしょう。

 そして、動画のオチとして注意を引きつけることで、小諸市の地産地消推進キャラクターの「こもろん」そのものが小諸を象徴することにつながり、メッセージ性をさらに明確化しています。

なぜ、市長なのか――「地域の代表性」と「制作時間の短縮」

 一般的な企業のテレビCMでは、社長が出てくると評判がよくないものが多いようです。それは、自己満足と押しつけがましさ、そして営利目的がプンプンと漂ってくるからでしょう。

 しかし、自治体のトップは、選挙というオープンな方法で地元の民意に基づいて選ばれていますから、その地域では間違いなく人気のあるタレントやアイドルと同じポジションと考えられます。

 そして、もちろん出演料はタダ。予算の少ない自治体は、こんな使い勝手の良いタレントをほうっておく手はありません。さらには、市長が参加することで市職員の連帯感が強くなっていくことも見逃せません。

 また、PR動画制作にあたって市民公募などを行った場合、自治体の公平性の名のもとに、「あちらを立てれば、こちらが立たず」で、結局カドのとれたつまらない動画になってしまうことがよくあります。さらには、企画の調整や市民などの出演者手配に時間がかかり、制作期間が長引くことによる機会損失につながってしまうことも危惧されます。

 そういった点からも、“トップダウンができる市長”そして“市民の代表”というキャラクターが有効に働くのです。

市長が体を張ってPR

 ほかにも、自治体トップが「体を張って」活躍するPR動画を見てみましょう。

【秋田県湯沢市「湯沢ストリート ブラッ!!改」篇】

 稲庭うどんなどで有名な秋田県湯沢市では、「副市長」が本格ラッパーとして登場。夏には野外フェス「湯沢ストリート村」が開催されました。「地域を盛り上げるのは、ほかならぬ自分たちだ!」という熱い想いが込められた、従来の“お役所イメージ”を覆す本格的なライム、リリックは必聴です。

鷹野義昭

鷹野義昭

株式会社テムズ代表取締役<CM戦略アナリスト・マーケティングディレクター>
1963年、長野県生まれ。大手広告代理店を経て、90年より現職。テレビCMを中心としたマーケティング戦略立案に携わり25年以上。1000素材を超すテレビCMの戦略策定・分析・広告効果測定の実績を持つ。
主な著書に『CM好感度NO.1だけどモノが売れない謎 ‐明日からテレビCMがもっと面白くなるマーケティング入門‐』(ビジネス社)などがある。近年では、秀逸なローカルCM・地方PR」動画を集めたサイト「ぐろ~かるCM研究所」の所長を務める。

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