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【原発避難いじめ】頑なに真実隠蔽の市教委&学校に対応丸投げ…政府の安全論の犠牲者達

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 一方、学校の対応として「原子力発電所の事故からの被災避難で転入してきたことを考え、対処方法に配慮すべきであった」と指摘し、「ただ単に学校になじめない児童という捉え方で終始した」「大いに反省を促したい」としている。

 そして「おわりに」として、いじめに関しては「予防に努めるとともに、早期発見、早期対応が何より大切である」「当該児童は、長期にわたり苦痛の日々を送ってきたことは、容易に推察でき」「乗り越え逞しく『活きて』いてくれる切に祈念する」とまとめている。

 しかし、いじめの事実を認め、学校や市教委の責任を問うたことは評価できるとして、「早期対応」と言いながら報告書を出すのに10カ月も掛けているのは疑問符が付く。しかも再発防止策は、この事件がなくとも考えられるような「個々の児童に沿った教育支援体制を確立する」「保護者とのコミニケーションの活性化」などの文言が連なり、「なぜ避難者へのいじめが発生し」「学校や市教委が放置することになったのか」への根本的な言及はなく、その問題はいじめ事件を起こし、放置してきた学校や市教委に任せてしまっている。

 ところが、その市教委は報告書を公開するに当たって、報告内容を「写真」のように黒く塗りつぶし、特にA君や父親の証言やそれへの担任教師などの問題を避けるような対応については、削られている。

 いじめの被害者であるA君や父親は、今回の問題でいわば情報の上では丸裸になっているのに、学校側は対応事実を隠しているその背景に迫ることがなければ、本当の意味での再発防止に迫ることができないと考える。

 このような現状に業を煮やしてかA君の代理人は、A君の声として、「どうしてあやまってくれない」と訴える手紙の内容を公表した。

「お父さんとお母さんから、どうしてこうなったか教育委員会が調べてくれるって聞いたけど、あれからものすごく時間がかかっているし、僕はこれからどうすればいいのか」
「新がたのいじめをテレビで見たけど、あっちは学校の先生があやまっているけど、どうしてこっちはあやまってくれない」

 転校直後から6年もの長きにわたって続いたいじめ問題の経過を考えたとき、本人への謝罪がまず最初に必要とされる。横浜市議会の子ども青少年局教育委員会の常任委員会でも、このいじめ問題や放射能汚染物の保管問題で集中審議が行われ、いじめ問題について「(市教委や学校は)A君に謝ったのか」「なぜ今なお謝らないのか」との厳しい質疑が続いた。

 一方、第三者委員会の報告書を受けて、横浜市及び市教委では、今回のいじめをもたらした事態の反省の上に立って、横浜市で150人に上るという福島からの避難者に対して同様の事態がないように、対応対策を立てることが必要となる。

 ところが、岡田教育長は「金銭授受をいじめと認定するのは難しい」ととば口でつまずくような認識を示し、市民団体が要望書を提出するという事態に進展した。

テレビでも批判の声が


 この問題には、テレビでも番組MCやコメンテーターから批判の声が上がっている。例えばマツコ・デラックスは次のように発言し、避難者が転校してきたからこそ原発について教育機会があったのではないかと主張した。

「そもそも論になっちゃうけど、福島でつくっていた電気をどこの人たちが使っていたのかってところまで、先生は説明してあげないといけないと思う」
「せっかく被災地から来た子が同級生になったんだったら、学校の先生はそれを教えてあげるものすごいチャンスだったと思うの」

 教師がそうしたことに触れようとせず、いじめを見過ごしていた状況にマツコは、「学校ってなんのためにあるのかなって。本気で思っちゃった」とその存在意義を疑問視し、批判した。

 また、『モーニングショー』(テレビ朝日系)の羽鳥慎一アナウンサーも、福島県から新潟県に避難していた男子児童の名前にばい菌の「菌」をつけて呼んだ担任教諭が、謝罪のための説明会を「非常に精神的なショックを受けたため」欠席しているという報告に、「精神的ショックを受けているのは、いじめを受けて相談しても取り合ってもらえなかった、不登校になった子どもではないでしょうか」とこの理由を批判。

 さらに『スッキリ!!』(日本テレビ系)では松嶋尚美が、福島からの原発避難生徒をいじめていた加害者の親に怒りをあらわにした。2児の母である松嶋は「イジメてたほうの親、何してんの!?」「どういう育て方したん?」「なんで気付けへんの?」と加害者の親を非難。奪った150万円を返して、謝罪するべきだとまくし立てた。

『とくダネ!』(フジテレビ系)で司会の小倉智昭氏は、生徒の手記の内容に「この文章は辛くて読めない。本当に気の毒だなって思う」とコメント。そして「(原発事故によって)失うものがどれだけ多かったのか、っていうのは子どもたちにはわからない部分もあると思うんですよねえ」「1度、あの被災した所に行ってもらうと、かなり違うんじゃないかな、と思いますけどね」と重い表情で、持論を展開していた。

 横浜市のこの事件の報道を受けて、新潟、群馬、川崎、そして東京都千代田区と福島県は、避難者生徒に対して同様のいじめが行われていたことを相次いで発表している。宮城県では、全県的な調査に入った。

切り捨てられた被災者・避難者


 今回の問題を発端に、次々と各地で同様の実態が明らかになりつつある。被災者や避難者、生活上でハンデを抱えた人を足蹴りしたいじめ。しかもそれが加害者生徒だけでなく、担任も、学校長も、教育委員会もそのいじめに気付かず加担してしまう。未来を閉ざす由々しき教育現場での出来事といえる。

 2013年に、与野党の議員立法で成立した「いじめ防止対策推進法」では、いじめの定義として、児童に他の児童が与える心理的、物理的行為であって、被害児童が心身の苦痛を感じるものとしている。

 その意味で今回のケースは、第三者委員会が認めた「『○○菌』と呼ばれたり、鉛筆を折られたり、ノートがなくなったり、蹴られたり、ものさしで叩かれたり、階段で落とされそうになった」事例だけでなく、累積150万円に上る金銭の巻き上げ行為ももちろんいじめといえる行為である。

 一方で、子どものいじめが大人社会の縮図であることはいうまでもない。実際、原発避難者へのいじめとしては、大人社会でも象徴的ともいえる事態が始まろうとしている。被災地である福島からの自主避難者への唯一の支援措置である住宅支援策を、今年3月には打ち切るという国の提案である。子どもの安全と健康を考えた福島からの避難生活に対して、経済的な圧迫を加えて、避難を止めさせるという企てである。

 日本政府は11年3月11日の福島原発事故までは、原発絶対安全論を主張し、事故後は汚染や被ばく安心論を振りまいてきた。その極め付けが、安倍首相が東京五輪・パラリンピック招致のために世界に向けて行った「汚染水はコントロールされている」発言である。

 事故発生からすでに5年11カ月あまりたち、もし自然災害だけであれば、被災地の復興にメドが立ち、避難している人たちも故郷に戻ることができる時期になっている。

 ところが、原発事故によって放出された放射性物質は、広島・長崎の原爆の数十倍に上り、大気、大地、樹木、家屋などを汚染し、その汚染によって発生した汚染廃棄物や除染土の処理は数千万トンにも上り、今もメドが立っていない。

 それらの処理に伴う汚染廃棄物の焼却処理は、東日本各地の焼却施設や専用の仮設焼却炉、汚泥焼却炉などで行われ、煙突から放射性物質を大気環境中に放出し、周辺住民の二次被ばくをもたらしている。

 被ばくによる影響は心配したとおり、福島での小児甲状腺がんの患者184人にも及び、これまでの100万人に1~2人という被患率の100倍近い発生率となっている。科学的事実に基づけば、原発事故とその影響は今も続き、福島県や周辺のホットスポットで生活することは、安全や健康の上で明らかにリスクがある。

 当然、子を持つ親に生活地域の選択権を与えることが、人権上必要である。そして、福島に住むことを選択した人たちにも、健康診断や保養などの充実・拡大は必要不可欠である。

 今回のいじめ問題の背景には、日本政府側から発せられる安心安全論とそれを垂れ流してきたマスメディアの影響により、子ども社会にも、あたかも「避難する必要がないのに今も避難している」という認識が浸透していることがあるようにみえる。大人社会のひずみが、子ども社会にいじめを生み出していることに、私たち自身改めて向き合うことが求められている。

 その意味で、横浜市の学校や保育園に子どもを通わせているお母さんたち30人が、今回のいじめ問題を他人事とせず、「横浜いじめ放置に抗議する市民の会」をつくり、今回のように行動を起こしたことは、画期的な出来事といえる。要望書に横浜市と市教委が、どのように答えるかが注目される。

 国のいじめ防止対策協議会(座長:森田洋司鳴門教育大特任教授)は、国の基本方針に「東日本大震災で被災した児童生徒に対するいじめの未然防止・早期発見に取り組む」などの項目を「いじめ防止対策推進法」の改定案に盛り込むことを大筋で了承した。横浜のいじめ問題も、この動きを後押ししている。なお同法では、心身や財産への重大な被害や長期欠席を余儀なくされたりした場合を「重大事態」と定義し、学校には文部科学省や自治体への報告が義務付けられている。
(文=青木泰/環境ジャーナリスト) 

※本稿は、月刊誌「紙の爆弾」(鹿砦社/2017年2月号)に掲載された拙稿『原発避難いじめ―子どものいじめの背後に、被災者いじめ社会』を1月26日の記者会見を受けて、再編集したものである。

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