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橋本之克「カモられない!コミュニケーション」

現状メリットよりデメリットが大きいプレミアムフライデー、早くも失敗か…成功条件を考察

文=橋本之克/アサツーディ・ケイ 不動産エネルギー カテゴリーチーム・リーダー
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行動経済学で見ると、コレはプレミアムではなかった

 プレミアムフライデーが制度でない以上、実行するかどうかは生活者個人の判断に委ねられる。その場合、何かモチベーションがなければ人は動かない。

 では、この運動で人々が得るメリットは何か?

「月に数時間の自由な時間」だ。

 逆にデメリットは何か?

 国やサービス業の狙い通りに人々が消費をするならば、「自分のお金を使って、減らしてしまうこと」がデメリットだ。そのほかにも、早退した時間分の仕事を別の時間で補てんする、仕事の関係者と調整するなどの手間も発生するかもしれない。

 行動経済学には「損失回避」という理論がある。同じだけの損得があったとして、人はメリットを得る喜びよりも、損失に対する恐怖のほうが大きいというものだ。従って、デメリットを大きく上回るメリットがない限り “人は動かない”。あえて損をするくらいなら現状のままで、何もしないことを選ぶのだ。この選択は「現状維持バイアス」とも呼ばれる。

 プレミアムフライデーのケースでも、「自由な数時間」と「大事なお金が減ること+仕事調整の手間」を比較すれば、デメリットが勝る。金曜の午後に早く会社を出て消費をすることはないだろう。せいぜい「自宅でのんびり過ごす人」が増える程度ではないか。

 では、どうすれば人は動くのか? 消費行動を起こすのか?

プレミアムフライデーは、コレで成功する!

 上記の単純比較においては、人は消費に向かわない。ただし現在のところ、比較の一方にある「メリット」の中身は、すなわち「自由な数時間で何をするか」は、まだ明確でない。あるいは出揃っていない。現在、サービス業各社から発表されつつある商品やサービスが、今後「メリット」の中身として比較の対象になっていくはずだ。

 しかし現状を見ると、単にセールやハッピーアワーの時間を夕方から午後3時に繰り上げた程度のものが数多く見られる。このレベルでは人は動かない。通常の帰宅時間後にも買える商品や、受けられるサービスならば、わざわざ早退する意味はないのだ。

「わずかな自由時間か、散財か」という単純比較ではなく、「金曜夕方に嬉しいコトがあるトコロへ行くか行かないか」という比較でなければならない。従って、金曜日の午後3時~6時の時間帯でのみ得られる商品やサービスであることが最低条件だ。「その時間でなければ得られない」メリットでなければならないのだ。

 プレミアムフライデーにより最も経済的利益を得るのは、流通、外食、旅行等のサービス業各社である。こういった企業が、今までにない新たな商品やサービスを提供できれば、プレミアムフライデーは成功する。しかし、国をあげての運動の“追い風”を、ただ受ければよいという意識の企業ばかりならば、失敗に終わるだろう。

 プレミアムフライデーの将来を左右するのは、国や雇用側の企業ではなく、サービス業である。この結果は、そう遅くない時期に出るはずだ。
(文=橋本之克/アサツーディ・ケイ 不動産エネルギー カテゴリーチーム・リーダー)

●橋本之克(はしもと・ゆきかつ)
日本総合研究所を経てアサツーディ・ケイ入社。消費財から金融・不動産・環境エネルギーまで幅広く、マーケティング調査や戦略プランニングを行う。主な著作は『9割の人間は行動経済学のカモである』(経済界)。

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