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大人気「人をダメにする」クッションは「腰をダメにする」?同じ姿勢が体に与えるダメージ

文=三木貴弘
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001_1706761_s-2015.jpg楽な姿勢から立ち上がる瞬間が危険(depositphotos.com)

 ライフスタイルの変化に伴い、人間は座っている時間が年々長くなってきている。日本人も欧米化されたライフスタイルに伴い、椅子やソファに座る機会も増えた。

 そこで、「座る」心地よさや快適さを追求した、さまざまな商品が開発・販売されている。ところが、座り心地のよさは人を非活動的にもする。

 巷で人気を博しているビーズクッションでできたクッションやソファなどは、快適すぎて「人をダメにする」というキャッチコピーが流布しているほどだ。極小のビーズが詰め込まれたクッションが変形して体を丸ごと包み込む--。初めて体験する、そのフィット感に驚いた人も多いだろう。一度腰かけると、その心地よさに身を委ねたまま動けなくなる。そして何もする気が起きなくなって“人をダメにする”のである。

 だが、その心地よさとは裏腹に、カラダへの負担を考えたことがあるだろうか。この心地よさが、腰痛の原因になっているかもしれないのだ。

 座りごごちが良いソファの要素のひとつに、柔らかい座面がある。座ると体全体が沈みこみ、リラックスしたまま、そこから動きたくなくなるようなものがある。一見、理想的なソファだが、そこで読書やゲーム、テレビや映画などを視聴するなど、長時間座り続けると、腰痛を招く危険性がある。

同じ姿勢が腰に悪影響を与える

 まず、座っている形に問題がある。座面が柔らかいソファというのは、お尻が沈み込むので、座った時に膝よりもお尻が低い位置になってしまう。

 その姿勢を少し具体的に説明すると、膝よりお尻が低い位置まで沈むことで、骨盤が後ろに倒れて、さらに腰部が丸まるような形になる。これは、腰に負担をかけ続けている姿勢なのだ。

 ふたつめの問題点は、同じ姿勢を取り続けていることだ。同じ姿勢を続けることは、腰によってよくないことである。

 「『理想的な姿勢』は存在しない〜『同じ姿勢を続けること』が病気のリスクに」の記事でも警鐘を鳴らしているとおりだ。

“人をダメにする”ほどの心地よさにおぼれて、同じ姿勢を取り続けてしまうということは、筋肉を使わない楽な姿勢なのだ。だからこそ心地よく感じるのだが。

 そこからいきなり立ち上がろうとすると、筋肉を使っていない状態から、急に筋肉を使うことになる。それはあたかも、起床してすぐに全力で走るようなものだ。当然、そのときにケガ(ギックリ腰)を生じる危険は高くなる。ギックリ腰は、<何気ない動作>の時に起こるものだ。

 これらの理由から、心地よいソファというのは魅力的だが、腰には好ましくないことがあると注意しておきたい。当然、日常的にそのような姿勢や動作を行う機会が多いというのは、それだけ腰を痛める危険性が増えることにつながる。

姿勢の適度な使い分けが腰痛リスクをぐっと減らす

「心地よいソファ」を使用するなということではない。そのような危険性がある、ということを頭に入れた上で使用するだけで、腰痛の危険性を減らせる。

 たとえば、立ち上がる瞬間に「気をつけよう」という意識が生まれる。それだけで、ぎっくり腰を予防するのに有効な習慣となる。また、一日中そのようなソファを使うことをせずに、背筋を伸ばした状態とリラックスした姿勢を適度に使い分けることで、腰痛を招く可能性がグッと減る。

 また、近年では、座り続けること自体が人間の寿命を縮める可能性があるという研究結果が次々と報告されている。一日に何時間も椅子に座り、デスクワークに追われると、腰痛や肩こり、運動不足など、座りっぱなしのデメリットは以前からも指摘されていた。

 2014年にはスウェーデン・カロリンスカ医学大学の研究チームが「座って過ごす時間(坐位時間)が短い人ほど、遺伝子のテロメアが長い」と報告。ほかにも、カナダ・トロント大学の研究者らが、坐位時間が長い人ほど、がんや心血管疾患(CVD)、2型糖尿病に罹る確率が高く、死亡リスクが高いという論文を発表している。

 座りっぱなしや同じ姿勢を続けるのは、腰痛に限らずさまざまな不調を招く要因が潜んでいるということを心しておきたい。
(文=三木貴弘)

※本稿は、「ヘルスプレス」にて、連載記事「“国民病”腰痛の8割以上はなぜ治らないのか」として掲載されたものです。

三木貴弘/理学療法士

三木貴弘/理学療法士

日本で理学療法士として勤務した後、豪・Curtin大学に留学。オーストラリアで最新の医療、理学療法を学ぶ。2014年に帰国し、東京の医療機関に理学療法士として勤務。現在は札幌市の整形外科専門の医療機関に勤務。その傍ら、一般の人に対しても正しい医療知識をわかりやすく伝えるために執筆活動にも力を入れている。執筆依頼は、”Contact.mikitaka@gmail.com”まで。

ニュースサイトで読む: https://biz-journal.jp/2017/03/post_18204.html
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