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土屋健「楽しい古生物・化石の世界」

繁栄したマンモス、次々姿消し絶滅の真実…「過剰殺戮説」と「気候変動説」が真っ向対立

文=土屋健/オフィス ジオパレオント代表、サイエンスライター

 この大型哺乳類の絶滅をめぐって、毎年のように研究者たちが論文を発表している。まず、従来から広く知られている仮説は2つある。人類に原因を求める説と、地球規模の気候変化に原因を求める説である。

 人類に原因を求める説は、「過剰殺戮(オーバーキル)仮説」として知られる。当時の人類は文明こそ確立していないものの、その生息域を大きく広げていた。集団で狩りを行い戦術にも優れた我らが祖先は、大型哺乳類を狩り尽くしてしまったのではないか、というわけである。

 実際のところ、ケナガマンモスは人類にとって“とても都合の良い獲物”だったらしい。大型動物を狩るには、人類側にとってもそれなりのリスクはあったはずだが、ひとたび狩りに成功すれば、それは人々をさまざまな面で支える資源となった。

 特にケナガマンモスは、肉はもちろん食料に、皮は服に、牙は加工して武器や道具となり、骨は住宅の建材となった。人類にとってケナガマンモスは、まさに「ハイリスク・ハイリターンの獲物」だったのだ。ちなみに、東京・上野の国立科学博物館には、ケナガマンモスの骨でできた「マンモスハウス」が復元・展示されているので、未見の方にはぜひ訪問をおすすめしたい。

 大型哺乳類の絶滅に関するもうひとつの仮説が、気候変化に原因を求める説である。当時、地球の気候は氷期を終え、次第に暖かくなっていった。そうした気候の変化に対して、“寒冷地仕様”のケナガマンモスはついていくことができなかったという説である。

ケナガマンモス絶滅の理由は温暖化や水不足?

 ケナガマンモスの絶滅をめぐる論争は、基本的に従来から、この2つの仮説をいかに“補強”していくかというところになっていく。

 たとえば、2013年にはケナガマンモスの個体数の変動を調べた研究が、スウェーデン自然史博物館のエレフセリア・パルコポウロウたちによって報告されている。この研究によると、ケナガマンモスの個体数はおよそ1万年前に初めて減少を迎えたわけではなく、過去20万年の間の比較的暖かい時期にも減少の傾向が見えていたという。すなわち、気候変化が原因であったという見方である。

 14年には、デンマーク、コペンハーゲン大学自然史博物館のエシュケ・ウィラースレフたちが、北極圏における過去5万年分の堆積物に含まれる植物などを分析するという新たな切り口の論文を発表した。

 この分析によると、約1万年前まではヨモギ、ノコギリソウ、キクなどがたくさん生えていた。しかし、約1万年前にその植生が変わったという。ヨモギなどは高タンパクであり、これらを食べられなくなったことがケナガマンモス絶滅の原因ではないか、という内容が、この論文では示唆された。

土屋健/オフィス ジオパレオント代表、サイエンスライター

土屋健/オフィス ジオパレオント代表、サイエンスライター

修士(理学) 日本古生物学会会員 日本地質学会会員 日本文藝家協会会員
日本地質学会刊行一般向け広報誌『ジオルジュ』デスク
オフィス ジオパレオント

Twitter:@paleont_kt

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