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舘内端「クルマの危機と未来」

【トヨタ社長の歴史的英断】数万点の部品&エンジン技術者の職を奪いかねないEV化推進

文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表
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数万点のパーツが不要になる

 EVにエンジンはない。場合によってはエンジンよりも開発費がかかりコストも高い変速機もない。スペースをとってはばからない燃料タンクもなく、高価な燃料噴射装置もなく、床下のスペースを占領するマフラーや高価な排ガス浄化用触媒もなく、ライトやワイパーを動かすオルタネーター(発電機)もなく、エンジンを冷やすラジエーターや冷却水、それを循環させる水ポンプ、さらにエンジンオイルも不要だから、高価なオイル交換も不要だ。部品を細かく分類すると、数万のパーツが不要になる。

 ということは、EVにシフトすると、7割方の研究者・技術者、組み立て労働者、部品を製作する協力企業も、それを運ぶ運送会社も不要となり、一方で研究・開発費は安く、生産効率は高く、現場の労働者も減らせる。こうした生産性の高さはグループ企業にもおよぶ。

 したがって、エンジン自動車の研究者、技術者、労働者、協力企業の大半は、EV化の抵抗勢力ということだ。自分たちの職場、会社を失うからである。自動車メーカーと協力企業が丸ごと抵抗勢力ということもできる。

EV化は雇用不安を生む

 EVへのシフトは、環境的にもエネルギー的にも将来にわたって必要であり、素晴らしいことのようにみえるが、雇用不安、グループ企業の削減といった大きな嵐に立ち向かわざるを得ず、喜んでばかりはいられない。反対が強くて当然である。

 しかし、ヨーロッパの多くの自動車メーカーがEVへと大きく舵を切り、米国の11州に規制が広がるZEV規制(自動車会社に販売台数の一定割合を排ガスゼロ車にするよう義務付ける規制)や、中国のEV優遇策を考えれば、EV化は必須である。

 EVにシフトするのであれば、企業には職場転換のための社内研修や新たな雇用対策等のさまざまな軟着陸対策が必要であり、大きな覚悟が求められる。

EVの開発現場は四面楚歌

 EVの開発現場は四方八方を敵に囲まれた四面楚歌、針のむしろである。すべての部署からの反対を押し切って開発し、生産しなければならない。いや、そればかりか販売の現場では、EVに関しては扱いがよくわらず、経験もない。誰も積極的に売ろうとはしない。研究・開発から販売までEVに手助けするものはいない。

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