「どこの大学にも大概あると思うのですが、東大は異様に授業の音声を一字一句テキストにする『書き起こし文化』が盛んです。書き起こしグループをつくって、授業によって『このコマは誰、このコマは誰』という具合に、当番制にして書き起こしをつくるのです。僕は『そんなのは必要ない。聞けばいいのに』と思っていたのですが、どうやら文字で見ないと頭に入ってこない人が多いようです。たとえば、僕は聴覚認知能力が高いのですが、逆に聴覚認知能力が低く授業を聞いていても頭に入ってこないという友人がいました。そのため、彼もやはり書き起こしをしていました。こういうことも、東大にはASDの人が多いのかなと思った要因のひとつです」(同)

 自身の東大在学中の実感に加え、「四人に一人」というのも「複数の人から聞いて裏取りをしたうえでの数字」だというが、結局、萩原氏は一連のツイートで何を伝えたかったのか。

「強いて挙げるなら、『身近にASDの人はこんなにいる』という事実を、より多くの人に知ってもらいたいと思います。たとえば、コミュニケーション能力が低い人に対して、いちいちキレるのではなく、諭してあげることも必要だと思うのです。だから、本人に悪意があるかないかを見極めることが、健常者であろうとASDであろうと必要な能力だと思うのです」(同)

 つまり、他人の発言にキレる前に、発言の意図を汲み取る努力が必要だと訴えている。

「つまり、悪意なく失言をしてしまう人もたくさんいて、もしかしたら、その人たちはASDかもしれないし、あなたもASDかもしれないと言いたいのです。ASDはそれぐらい身近なもので、あくまでもASDというのはスペクトラム(連続体)なので、ASDの度合いが0%という人は、そもそも世の中にほとんどいないのです。そのなかで、おそらく東大は突出してASDの度合いが高い人が多いようだというのが僕の感想です」(同)

 萩原氏のツイートに関して東大の広報に取材したところ、「卒業生のツイートに対する東大としてのコメントは特にありません」との回答であった。また、コミュニケーション・サポートルームの存在については、「自閉症スペクトラムの診断のあるなしにかかわらず、コミュニケーションに不安のある学生からの相談を受け付けている機関です」と説明があった。

東大にはアスペルガー症候群の学生が多い?

 ところで、実際のところ、東大にはアスペルガー症候群の学生が多いのだろうか。

 ASDの研究で名高い早稲田大学教育・総合科学学術院教授で教育学博士の梅永雄二氏は、この疑問を肯定する。

「研究者の間でも、東大の学生の4分の1はアスペルガー症候群だろうということは、昔からいわれてきたことです。ただし、実際に調査したわけではないので、正確な数値ではありませんが、東大に限らず、優秀な大学ではアスペルガー症候群の学生が多いといわれています。また、理科系の学部ではさらに多い傾向にあります」(梅永氏)

 東大の「書き起こし文化」も、アスペルガー症候群の学生が以前から多かったことが背景にある可能性が高い。

「アスペルガーに限らずASDは、視覚優位という特徴があります。目から入る情報については極めて理解が速いのです。ただし、情報の全体像ではなく、一部を集中して見るといったことがあります。それは、トンネルビジョン、シングルフォーカスなどといわれますが、一般の人が気づかないような細かな点を見つめていることがあります。聴覚から入った情報も、視覚的に脳裏に残して超人的な記憶能力を発揮することができる人もいます」(同)

 優秀な大学にはアスペルガー症候群の学生が多いというが、それはなぜなのか。

「そもそもアスペルガー症候群は、知的水準が高い自閉症のことをいうので、学力は高くなります。また、自分の好きな分野については、とことん突き詰めるので、偏差値の高い大学へ入れる可能性は高いです。さらに、研究する仕事に向いているので、研究職に就いて高い成果を上げている方が多くいます。反対に、対人関係を要する仕事に就くと、トラブルを起こしやすい傾向があります。実際、大学の研究者の中にはアスペルガー症候群の人が多いですよ」

 つまり、萩原氏が“肌感覚”として得た「東大生の4人に1人がASD」というのは、荒唐無稽なことではなかった。アスペルガー症候群を持っている人は、周囲が驚くほどの能力を発揮することも多く、過去の偉人の中にもアスペルガー症候群だったと推測されている人物は数え切れないほどいる。今後もアスペルガー症候群をはじめとしてASDの方たちによって、偉業が成し遂げられることも多く見られるだろう。
(構成=青柳直弥/清談社、編集部)

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