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筈井利人「一刀両断エコノミクス」

【トランプを支持し貧困化&職を失う米国国民】企業競争力低下で生活低下、保護主義の罠

文=筈井利人/経済ジャーナリスト
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 貿易が国内雇用に及ぼす影響は、雇用者数の増減ではなく、どの産業で何人が働くかという組み合わせの変化だ。この変化により世界の労働者は、それぞれ相対的に生産性の高い仕事を行うことができるようになる。

 次に、「貿易のせいで、豊かな国と貧しい国の格差が広がった」という批判もよく聞く。しかし米経済学者ティモシー・テイラー氏が述べるように、サハラ以南のアフリカや中国内陸部などの貧しい地域は、これまで貿易にあまり参加してこなかった。貿易のせいで貧しくなったのではなく、貿易をしないから貧しくなったのである(『スタンフォード大学で一番人気の経済学入門マクロ編』<かんき出版>)。

 また、「未成熟な新産業を国外の競争から守れ」という声もある。だが、それはむしろ逆効果になるおそれが大きい。ブラジルは1970年代、国内のコンピューター産業を守るために輸入を制限した。その結果、1980年代の終わりまでに世界の水準から10年も遅れてしまったと前出のテイラー氏は指摘する。

 さらに、「安全保障の面から貿易を制限せよ」と唱える向きもある。しかし、石油が重要な資源なら、むしろ積極的に輸入して備蓄し、いざというときに備えるべきだろう。輸入を制限し、国内資源を使い尽くしてしまったら、安全保障にはむしろマイナスである。

保護主義と政治

 保護主義は、理屈で考えれば誤りが明らかなはずなのに、政治的な支持は根強い。なぜだろうか。

 保護主義によって損失を被るのは、より安価あるいは高品質な外国製品を買えない国内消費者である。一方、恩恵にあずかるのは、外国製品との競争にさらされず既得権を守れる国内生産者である。しかし政治で影響力を発揮するのはほとんどつねに生産者であり、消費者の声はまず反映されない。それには以下のような理由がある。

(1)個々の生産者が受ける保護主義の利益は大きいのに対し、消費者が負う保護主義のコストは総計では大きいものの、個々には小さい。

(2)生産者はよくまとまり、組織されているのに対し、消費者はばらばらで、組織されていない。

(3)政治家は保護主義を支持すると、保護される国内企業から投票、支持、献金などの見返りを得ることができる。逆に、 貿易障壁を撤廃・縮小すると、保護されなくなる国内生産者から投票、支持、献金を失うなどの代償を払わなければならない。

 国内市場に大きな既得権を持つ企業の経営者や労働者であれば、自分の商売が外国企業との競争にさらされるのは困るというのが本音だろう。その気持ちはわかる。

 しかしだからといって、政府の力を使い、保護貿易で消費者の商品購入を妨害してよいはずがない。それはあらゆる企業に共通する「顧客第一」の理念に反する。保護主義を頼みに生き延びる企業は、ロビー活動に時間や資金を費やし、やがて本来の競争力を失うだろう。そのような企業が増えるほど、国は衰退する。

 一方で、消費者は商品やサービスの品質・価格で選択の幅が狭まり、生活水準が下がる。貧困層はさらに暮らしが苦しくなる。保護主義は消費者を保護しない。保護されるのは一部の生産者だけで、消費者、すなわち一般市民はその犠牲になるのだ。
(文=筈井利人/経済ジャーナリスト)

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