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「村上春樹現象」という捏造された幻想…読書イベントはたった9人、語り合いなく静かに解散

文=武田翔太/清談社
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「徹夜して読む会」参加者は1ケタ、サクラも?

「徹夜して読む会」の会場は1階フロアの中央にあたるスペースだ。イベントの定員は30名だったので、会議用テーブルが四角形につなげられ、椅子が20脚以上用意されていた。

「村上春樹現象」という捏造された幻想…読書イベントはたった9人、語り合いなく静かに解散の画像5「誰よりも早く村上春樹さんの新刊を本屋で徹夜して読む会」の様子

 ところが、実際の参加者は、筆者を含めてもわずか7~9人。大学生らしき男性2人、女性2人を中心に、途中で20代の女性が1人加わったり、出勤前の会社員と思われる男性が明け方に参加したりしたが、参加者は最後まで10人に満たなかった。

 しかも、そのうちの2人は筆者を含めて取材目的で、うち1人のOL風の女性は、終始おとなしく席に座って本を読んでいたが、イベントが終わると会場を片付け始めたため、“サクラ”だった可能性もある。

 そして、このわずかな参加者たちを大勢のマスコミが取り囲み、盛大にフラッシュを浴びせるのだ。なかでも、純粋なイベント参加者と思われる大学生風の男女4人にマスコミが集中的に群がり、買ったばかりの新刊を読んでいるにもかかわらず、至近距離にカメラを近づけてバシャバシャ撮影する。おそらく、彼らは新作の内容などまったく頭に入らなかったに違いない。

「ショボい」のは「徹夜して読む会」だけではなく、終了後も同様だった。参加者同士が『騎士団長殺し』について熱く語ったり感想を言い合ったりするのかと思ったら、そんな気配もまるでない。イベント終了時間の6時になると、全員がそそくさと帰り支度をして静かに解散してしまった。

 これが村上春樹『騎士団長殺し』発売当日の現実だ。率直にいって、このイベントはマスコミに取材してもらい、発売日が盛り上がったと見せかけるための「舞台セット」にすぎず、参加者はその道具にさせられたようなものだろう。

ハルキストはマスコミがつくり上げた幻想?

 実際、翌日のテレビの情報番組やネットニュースなどでは、同書店のカウントダウンや「徹夜して読む会」の様子が大盛り上がりだったかのように報じられていた。わずか数人の参加者のコメントを恣意的に編集し、まるで数多くのハルキストが発売イベントに殺到したかのように見せかけていたのだ。本来のショボい雰囲気を伝えた報道はゼロに等しかった。

 ほかの発売イベント、たとえば代官山蔦屋書店で行われたカウントダウンは100人を超えるハルキストが集結したと報じられたが、よく考えれば100人というのも大騒ぎするほどの数ではない。

 なにしろ、米アップルが2010年5月にiPadを発売したとき、アップルストア銀座には8時の開店時点で1200人の行列ができ、昨年9月のiPhone7の発売でもアップルストア表参道に2日前からファンが並んだのだ。

 こうした“本物”の社会現象と比べると、村上春樹の新作発売イベントはあまりにもショボすぎる。発売から約1カ月がたち、『騎士団長殺し』が話題に上らなくなったのも、ある意味で当然。もしかしたら、村上春樹信者を指す「ハルキスト」という存在も、マスコミがつくり上げた単なる“幻想”なのかもしれない。
(文=武田翔太/清談社)

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