一定の時間、スマートフォン(スマホ)を利用できなくなるように自分で設定し、その間どうしても使いたくなったら100円課金して解除する――。
そんなユニークなアプリがある。石川県金沢市のデザイン会社・ヨシタデザインプランニングが開発した「タイマーロック3」だ。社長の葭田護氏に、“スマホ中毒対策アプリ”を開発した背景について聞いた。
もはや自力では制限できない?スマホ依存が深刻化
――そもそも、なぜこのようなアプリをつくろうと思ったのでしょうか。
葭田護氏(以下、葭田) 自分の子供がずっとスマホでゲームやLINEをしていたので心配になってしまった、ということが一因ですね。ただ、今の子供の世代の場合、スマホを持たせないと仲間はずれにもなりかねませんので。
節度ある利用のためのアプリということで、2014年に「タイマーロック」と有料版の「タイマーロック2」をリリースしました。有料版は無料版と比べて曜日ごとの時間設定ができるので、平日と土日で設定を分けることができます。「タイマーロック」と「タイマーロック2」は、親がパスワードを用いて子供のスマホ利用を制限する仕組みです。
――一方、16年にリリースされた「タイマーロック3」は、「親がパスワードで子供のスマホを制限」という従来の方法から、「自分で制限時間を設定し、その間はスマホが使えなくなる(解除する場合は100円課金)」と、自分主体の制限スタイルに変わりましたね。
葭田 はい。制限している間は「かかってきた電話に出ること」と「電話をかけること」しかできなくなります。それまでの「タイマーロック」と異なり、「今から何分間は利用しない」というかたちで制限します。最短10分から最長6時間まで制限でき、その間にどうしてもスマホを利用したい場合は100円課金する仕組みになっています。

――なぜ、このスタイルに転換したのでしょうか。
葭田 ユーザーからの要望を反映したかたちですね。「もっとロックを強くしてほしい」「絶対に外れないようにしてほしい」「24時間止められないか」などの声をいただきました。
――「なんとかしたいのに、もう自力だけではどうにもならない」という人が少なくないのでしょうね。気になる課金ですが、どのくらいの人が「自分で○分間はスマホを見ない!」とあえてかけた制限を100円払ってでも解除しているのでしょうか。
葭田 具体的な数や率については非公表ですが、事前にこちらで想定していた数より若干多いくらい、課金されています。また、「タイマーロック3」のヘビーユーザーの方ほど課金する傾向にあります。
高校生が勉強のために利用、30~40代ユーザーも
――ちょっと意外ですね。「一度課金してしまったから、もう課金してなるものか」になるのかと思っていました。ただ、タイマーロック3のヘビーユーザーということは「今の自分のスマホ利用状況をなんとかしたい」ということですから、健闘を続けているともいえますね。「一回課金して、自己嫌悪からアプリをアンインストールして、なかったことにしてしまう」でなく、使い続けているのですから。
葭田 もちろん、100円の課金が歯止めになって、課金をしないで済んでいる方が大半です。「自分で自分のスマホを見られるようにするために、あえて100円払う」というのは、ある意味バカげたことですよね。「タイマーロック3」が多くのメディアから取材をいただいたのも、それゆえだとは思いますが、ユーザーから「歯止めになって助かっている」と好意的な声をいただいており、ありがたいですね。